”圧”平衡定数Kpとその関連問題の解説
<この記事の内容:1>:Kpで表される『圧平衡定数』の求め方を、理論化学の『気体』分野の解説をしながら紹介します。
<記事の内容:2>:Kpを求め、それを応用する練習問題に加えて、前回「化学平衡と(濃度)平衡定数Kc」で学んだ『濃度平衡定数:Kc』の具体的な問題を合わせて取り組みます。
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”圧”平衡定数Kpとは?
”圧”平衡定数は、その名が示すように可逆反応を起こす反応において、分圧が平衡な状態になった時に求まる定数です。
Kpと”濃度”平衡定数Kcの違い
まず定数の文字の意味から見て見ましょう。
平衡定数はK(数学で学ぶ積分定数などでは、英語で定数を意味するConstantや、その頭文字”C”が用いられますが)、【化学で扱う定数】ではConstantのドイツ語訳:Konstanteの先頭の”K”を使います。
さらに、添え字としてpとcがついています。
pはPressure=すなわち”圧力”なので、”圧”平衡定数を表したい場合にはKpを用います。
一方で、cは=Concentration”濃度”、よって前回のような”濃度”平衡定数はKc、もしくはKで表します。
この他にも、溶解度積の分野で出現するKsp、加水分解定数Kh、etc,,,があるので注意しておきましょう。
圧平衡定数の求め方
以下のように、可逆反応である\(\alpha A+\beta B\leftrightarrow \gamma C+\delta D \)という反応が平衡状態となった場合には、
圧平衡定数は:$$K_{p}=\frac{p_{C}^{\gamma}p_{D}^{\delta}}{p_{A}^{\alpha}p_{B}^{\beta}}$$で求めることができます。
全圧・分圧と解離度
$$K_{p}=\frac{p_{C}^{\gamma}p_{D}^{\delta}}{p_{A}^{\alpha}p_{B}^{\beta}}$$
でそれぞれの\(p_{X}\)は、その気体の分圧を表し分圧の総和=全圧が成り立ちます。(ドルトン分圧の法則)
また、反応物(左辺)が平衡状態でどの程度反応したか(生成物になったか)を『解離度』という値を使って求めることになります。(問題文で与えられます。)
KcとKpの練習問題編
では、具体的にKpを問題を使って求めていきましょう。
Kpを求める問題(四酸化二窒素と二酸化窒素)
練習問題1:いま、全圧\(2.0\times 10^{5}( Pa) \)を保った条件のもとで、「\(N_{2}O_{4}\)」から「\(2NO_{2}\)」が生成される可逆反応が起き、平衡状態となった。
この反応の解離度を"0.7"として、初めには\(NO_{2}\)が存在しなかったとき、各々の平衡状態での分圧と圧平衡定数Kpを求め、単位と併せて答えよ。
解答解説
圧平衡定数の問題では、大抵出題される物質が決まっていて、この四酸化二窒素の他には
・一酸化炭素
・ヨウ素、が頻出です。
さて、解説1に移ると初めは\(N_{2}O_{4}\)しか存在していないので、4酸化2窒素の分圧=全圧となり、解離度が0.7(問題文より)であるので、
いつもの様に、反応の前→中→平衡時の表を作ってKpを求めていきます。
この様に、\(N_{2}O_{4}は0.9(mol),NO_{2}=4.2(mol)\)で平衡になった事がわかります。
ここで、全圧:\(2.0\times 10^{5}\)より四酸化二窒素の分圧は$$2.0\times 10^{5}\times\frac{0.9}{0.9+4.2}=\frac{6}{17}\times10^{5}(Pa)$$、二酸化窒素の分圧は$$2.0\times 10^{5}\times\frac{4.2}{0.9+4.2}=\frac{28}{17}\times 10^{5}(Pa)$$と求まるので、・・・(答え1)
上の紹介したKpの式にそれぞれの分圧を代入して、$$Kp=\frac{(\frac{28}{17}\times 10^{5})^{2}}{\frac{6}{17}\times10^{5}}$$
少し答えの値がきたなくなってしまいますが、計算を進めると\(Kp≒7.68\times 10^{5} (Pa)\)
\(∴Kp=7.7\times 10^{5}(Pa)\)・・・(答え2)
Kcの求値問題(ヨウ化水素の可逆反応)
前回は、Kcについて全て文字で与えて計算していましたが、今回は具体的な数値を用いて問題を解いていきます。
題材は、ヨウ素と水素からヨウ化水素が生成される可逆反応です。
練習問題2:いま、1(L)の容器中でヨウ素I:2(mol)と水素H_{2}:3(mol)からヨウ化水素:HIが生成される可逆反応が起き、平衡状態となった際には3(mol)のHIができた。
この時の(濃度)平衡定数Kcの値を単位付きで求め、解答せよ。
解答解説
解説2:普段通り反応の前→中→平衡の表を作ってKcを求めていきます。
上の表の通り平衡時のモル濃度を計算して、Kcの式に代入していくと、
$$Kc=\frac{(3(mol/L))^{2}}{1.5(mol/L)\times 0.5(mol/L)}$$
分子の単位が(mol/L)の二乗、分母の単位も(mol/L)・(mol/L)なので、きれいに単位が打ち消しあって、この場合の平衡定数は単位がない”無次元数”となります。
よって、上の計算の結果\(K_{c}=12\)・・・(答)
Kcを求めたあとに頻出の問題と解法
実際にこのような手順を踏んで(濃度)平衡定数を求めた後は、これを利用する問題が続く事が一般的です。
例えば、『問題2の平衡状態で温度が変化していない容器にヨウ素(など)を●(mol)加えた。この後、再度平衡状態となった時の、I_{2}、H_{2}、HI それぞれの物質量を答えよ。』
といったものです。
ここでは、『温度』が変化していない事が大切で、平衡定数は温度による影響しか受けないので先ほど求めたKcがそのまま使えます。
ゆえに、”Kc=12”のままで同じです。
問題2と同様に前・中・平衡(再度)の表を描き、変化した分を文字で置いて→$$12=\frac{(HIのmol濃度)^{2}}{(Iのmol濃度)(H_{2}のmol濃度)}$$
をそれぞれ代入する事で各物質のmol濃度が求まります。
KpとKcの相互変換【重要!】
ここでは、”Kp”と”Kc”それぞれの定数を『理想気体の状態方程式』PV=nRTを媒介として、結びつける(変換する)方法を解説します。
$$Kc=\frac{(\frac{n_{C}}{V})^{\gamma}(\frac{n_{D}}{V})^{\delta}}{(\frac{n_{A}}{V})^{\alpha}(\frac{n_{B}}{V})^{\beta}}$$
解説と状態方程式を経由するイメージ図
(詳細は→『理想気体の状態方程式とボイル、シャルルの各法則』を参考にして下さい)
解説(Kp⇔Kc)
PV=nRTを変形すると、$$\frac{P}{RT}=\frac{n}{V}$$となって、右辺が濃度平衡定数の式における[X]にあたります。
ゆえに、上のイメージの様にKcの式に、分母・分子にかかる余計なRTかけてを打ち消すと圧平衡定数Kpが求まります。
今回のまとめと関係する記事
今回は、Kc(濃度平衡の復習)からKp(圧平衡定数)の求め方と例題、KcとKpの変換・単位について解説しました。
理論化学の中でも化学平衡は「超重要分野」なので、ぜひ何度も復習してみてください。
次回は”反応速度と平衡の関係・『”係数乗”は【反応速度】では普通成り立たない理由』”について解説していきます。
〜気体分野と電離平衡へ〜
「(今ココです)Kp:圧平衡定数の求め方(2)」
平衡と酸・塩基との融合は
>>「電離平衡と弱酸のpHの求め方」
平衡がかたよるor変わらないルールは
今回も最後までご覧頂き、ありがとうございました。
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