アンモニアと硝酸の工業的製法

(ハーバー・ボッシュ法+オストワルト法)

<この記事・工業的製法シリーズの内容>:無機化学において重要かつ頻出分野である「工業的製法」。

効率よく特定の金属や化学物質を得るために、昔から科学者・発明家・実業家などがその知識を用いて作り出した「人類の叡智」とも呼べるものです。

が、覚えづらい。。苦手だ、という人が非常に多いところでもあります。

このシリーズでは、なるべく理屈とストーリー、イラストを使って工業的製法+その周辺の化合物を詳しく・覚えやすく解説していきます。

ハーバーボッシュ法

アンモニアは肥料や化学工業の原料などとして必要不可欠なものです。

(特にハーバー法が発明されたことで、食料生産や人口増加に大きな影響を及ぼしました。コラム:「マルサスの人口論とロジスティック方程式〜シグモイド関数まで」)

そして我々がアンモニアの生成式を書くときに思い浮かべるのは、\(\mathrm{N_{2}+3H_{2}→2NH_{3}}\)ではないでしょうか?

通常、実験室など普通の状況ではこの通りに反応してくれません。(窒素と酸素は大気のほぼ100%近くを占めています。勝手に反応が起こるならばアンモニアだらけになってしまいます!)

ハーバー=ボッシュ法の概要

\(\mathrm{N_{2}+3H_{2}⇔2NH_{3}+92KJ}\)

上の非常に単純な反応を”無理矢理”引き起こすことで、ありふれた窒素および水素から価値のあるアンモニアを製造するのが、ハーバーとボッシュにより発明された、ハーバー・ボッシュ法です。(そのまま)

手順と化学平衡分野の知識

鉄(三酸化四鉄;\(\mathrm{Fe_{3}O_{4}}\))触媒、かつ『高温高圧条件』のもとで\(\mathrm{N_{2}とH_{2}}\)を反応させます。

これ自体は特に複雑なものではないので、四酸化三鉄を覚えておくだけでいいでしょう。問題は次の項で扱う条件です。

ハーバー法は化学平衡の知識を利用すると理解しやすいので「化学平衡」や次のルシャトリエの原理などの知識の欠けがある人は、先に復習してから読み進めると良いかと思います。

触媒と高温/高圧で反応させるワケ(頻出)

ルシャトリエの原理や、平衡、反応速度の理解を問うことができるので非常によく出題される問題です。

意味とともにしっかり頭に入れておきましょう。

高圧下で反応させる理由は、(左辺の係数)と(右辺の係数)を比べれば「より分子数が少ない方向へ移動させるため」であるので難しくありません。

一方で問題なのは「高温」の方です。

なぜ高温か?

普通に考えれば、高温よりも低温の方が平衡が右に移動しやすい(右辺が+30KJと発熱反応なので)ハズです。

\(\mathrm{N_{2}+3H_{2}→2NH_{3}+92kJ}\)

逆に(このハーバー・ボッシュ法のように)高温下では発熱側から吸熱側(←方向へ)平衡が移動してしまいます。

それでも高温で反応を進めるのは、(【気体分子運動論】を物理で習っている人は理解しやすいと思いますが)

・温度が高い=分子の運動エネルギーが大きい=高速で飛び回り分子同士がぶつかりやすい→反応が早く起こる、からです。

アンモニアと錯イオン/配位結合

(現在アンモニアの性質について加筆中、以下の錯イオンの記事も参考にしてみてください)

配位結合の解説(アンモニウムイオン)など

錯イオンの性質と構造・覚える事まとめ

オストワルト法

ハーバー・ボッシュ法に引き続き、よく?どちらがアンモニア/硝酸の製法だったかど忘れしやすい『オストワルト法』の解説を行っていきます。

硫酸の製法はコチラ→「接触法と硫酸の性質

概要

オストワルト法は、“アンモニア”から“硝酸”を作り出す方法なので、先ほど紹介したハーバー・ボッシュ法と連続して(1つの大問でまとめて)出題されることが多いです。

オストワルト法の順序

また、オストワルト法は先ほどのハーバー・ボッシュ法で”化学平衡の知識”が重要だった様に、酸化還元の知識が役に立ちます。

(復習・参考用:「酸化還元分野のまとめ記事」)

アンモニアto硝酸:反応式の作り方/Pt触媒

基本的にアンモニアを酸素で酸化させ(1)←この時Ptを触媒として用います。

それによってできる一酸化窒素を再び(2)のように酸化(空気中ですぐに酸化します)し、最後に水と反応させることで硝酸と一酸化窒素(*)を作り出します。(3)

\(\mathrm{4NH_{3}+5O_{2}→4NO+6H_{2}O}\cdots (1)\)

\(\mathrm{2NO+O_{2}→2NO_{2}}\cdots (2)\)

\(\mathrm{3NO_{2}+H_{2}O→2HNO_{3}+NO}\cdots(3)\)

全体の式をあわせて記述すると、

\(\mathrm{ NH_{3}+2O_{2}→HNO_{3}+H_{2}O}\cdots(4)\)

のようになります。

反応が複数の段階を踏むので、酸素→(空気)酸素→水、を順次加えていくこと、それぞれの係数を語呂合わせなどを作って覚えておきましょう。

一酸化窒素の無駄をなくすサイクル

上の(3)中の(*)で出来た一酸化窒素を、再び(2)のところへ持っていくことでNOを無駄なく効率的に硝酸にすることができます。

硝酸の特徴

・強酸、かつ、酸化力がある

・塩酸とともに(混酸として)王水を構成する。

→イオン化傾向が極めて小さい、PtやAuまで溶かす事ができる。

アンモニア・硝酸の工業的製法・性質まとめ

ここで挙げた2つの製法と、それによって得られる\(\mathrm{NH_{3},HNO_{3}}\)は我々が日常生活を送る上でなくてはならないものです。

また、これらの工業的製法は完成されたわけではなく、日々より効率的で環境に優しいような方法がないか研究が進められています。

無機化学:工業的製法シリーズへ

工業的製法と覚え方・理解のコツまとめ

 

Twitterでフォローしよう