平衡の移動とルシャトリエの原理
高校理論化学の中でも化学平衡は最難関分野です。
その中で反応物や生成物の濃度、全体の圧力や温度変化などによって平衡がかたむく際、
どの様にして平衡状態を保つかを決めているのが「ルシャトリエの原理」です。
丸暗記しがちなところですが、少し考えてみると覚える必要がなくなる
=試験中に忘れても自分で解ける様になるのでその「考え方」を身につけていきましょう。
ちなみに、タイトルの「希ガス」に注意!については、理由も含め以下で解説していきます。
目次(タップした所へ飛びます)
大原則:平衡状態は変化を嫌う
化学反応において、反応物と生成物が平衡状態にある時、
平衡をたもつ(平衡状態が崩れることを防ぐ)為の動きが起こります。
この考え方をしっかりもっておけば、以下の原因1〜8と、それに対応する平衡の移動はすべて理解できます。
平衡状態とは反応が止まった状態の事ではない!
よく勘違いしている人が多いのですが、平衡状態だからと言って化学反応が止まっている訳ではありません!
あくまで「正反応」と「逆反応」がつりあっているので“見かけ上”反応が停止している様に見えるだけです。
平衡状態が崩れる原因一覧
原因⑴反応物が増える/減る
原因⑵生成物が増える/減る
原因⑶吸熱/発熱を伴う化学反応が平衡状態にある時、外部から熱を吸収する(加熱する)
原因⑷吸熱/発熱を伴う化学反応が平衡状態にある時、外部へ発熱(冷却する)
原因⑸全圧を上げる
原因⑹体積を増やす
原因⑺全圧を保ったまま希ガス(特にAr)を加える
原因⑻全体積を保ったまま希ガスを加える。
ザッと入試で問われる原因を8パターン挙げました。今からこのそれぞれのパターンに対して、
どの様な変化が起きて平衡状態を保とうとするかを解説していきます。
ここでは仮にAとBが反応物、Cが生成物として、この反応が+Q(J)の発熱反応であるものとして考えます。
ルシャトリエの原理詳細
仮の可逆反応:A +B⇆C +Q(J)...(※)
上の化学反応式の(左辺)が反応物、(右辺)が生成物です。
原因1:反応物が増える/減る
反応物が増えた時は、(*)の式の左側が増えるので、A,Bを減らすために(平衡が右に傾く)
反応物を減らした時は、(*)の式の左側A,Bを増やすために(平衡が左に傾く)
原因2:生成物が増える/減る
生成物を増やした時は、Cが過剰になるのでCを減らすために(平衡が左へ傾く)
生成物を減らした時は、Cが増えるように(平衡が右へ傾く)
原因3:加熱する
発熱反応(右辺に+Q)に加熱した時、仮に平衡が右へ傾いてしまうと、
さらに発熱して温度が上がるので、平衡は左へ傾きます。
<参考:「熱化学(方程式)シリーズ1」>
原因4:冷却する
発熱反応を冷却すると、3の逆の仕組みで、温度を上げるために発熱反応が促進する方向、
つまり平衡は右に傾きます。
「圧力」と「分子数」
ここからは「圧力」が「分子の数」によって変化するという考え方が重要になってきます。
分子は容器中を飛び回り容器の内側に衝突します。この衝突した時の力によって「圧力」が生じます。(詳しくは物理の熱力学にて)
原因5:全体の圧力を上げる
全圧を上げる=圧力が上がるので、圧力が下がる方向=つまり分子数が少ない方へ平衡が傾きます。
ここでA+B=C+Q(J)の式の係数に注目すると
左側(反応物側)はA:1つとB:1つに対して、右側(生成物側)はC:1つになっています。
つまり分子の数が左2:右1なので、全圧を上げた場合分子数が少ない右へ平衡が傾きます。
原因6:全体積を増やす
体積を増やす=5の逆で、圧力が下がるため
分子数を増やす方向=圧力を上げる方向=平衡が(分子数が多い)左に傾きます。
希ガス(アルゴンやヘリウム)に気を付けろ!
ココから「希ガス」が関わります。間違える人が増えるので気をつけて下さい。
なぜなら、希ガスは反応性が極めて低い性質ゆえ、他の気体と化学反応することが無いためです。
原因7:不活性ガス(希ガス)を全圧一定で注入
「全圧をたもったまま」と言うのがポイントです。
ドルトン分圧の法則より、全圧=分圧 +分圧 +・・・ +分圧なので、
全圧一定で希ガス(周りの分子と反応しない)を入れると、もともとあった気体分子の圧力が下がります。
これを妨げるために圧力を上げる=分子数を増やす方向=平衡は左に偏ります。
原因8:不活性ガス(希ガス)を全体積一定で注入
今度は「全体積を保ったまま」、「反応性の乏しい希ガスを入れる」ので、
体積不変=従来の分子は同じ空間を動ける=左右両方の反応は不変なので、平衡は移動しません。
【触媒についての注意】
触媒は、「反応速度」を変化させますが、「平衡の移動」には関わらないので気を付けてください!
まとめと化学平衡の関連記事
冒頭にも書きましたが、種類が多いルシャトリエの原理も、
理由を考えながらインプットすることで忘れにくく、また、応用も効きやすくなります。
主な理系科目の中でも、化学は暗記の量が多いと考えている人もいますが、原理を理解する事で覚える量は最小限に抑えられます。
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