行列の固有値と固有ベクトルの意味と求め方

線形代数入門第5回

前回「線形代数入門(4):一次変換の意味と実践」に引き続き、今回は「行列の固有値」と「固有ベクトル」の意味と求め方について詳しく解説していきます。

(これまでの線形代数入門シリーズは、以下のリンクよりご覧頂けます。)

>>「【随時更新】線形代数シリーズ:0から学べる記事総まとめ【保存版】」を読む<<

行列の固有値と固有ベクトルの意味

固有値(λで表されるスカラー)、固有ベクトルは、のちに学ぶ「対角化」やそれを応用した行列のべき乗をはじめ、線形代数学に必須です。

この記事では、最も単純な2行2列の実行列のλと固有ベクトルを求めていきます。

固有値λ・固有ベクトルAの定義と求める目的

正方行列Aと、零ベクトルでないベクトル(x,y)、そしてスカラー「λ」の間に

$$A\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=λ\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}$$

が成立する時、ベクトル

$$\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}$$

を「固有ベクトル」、スカラーλを「固有値」といいます。

これだけでは、何をしているのかわからないと思うので、実際に例を使って解説していきます。

ちなみに、この固有値と固有ベクトルを求める目的は、主に「対角化」と呼ばれる正方行列を「対角行列」にするときに固有値・固有ベクトルが必要になるためです。

(対角化と対角行列については次回の「線形代数(6)対角化と行列のべき乗」で詳しく説明しています。)

固有値・固有ベクトルと一次変換(本題)

さらに『固有』には重要な意味があります。

普通、行列を使ってベクトルの一次(線形)変換を行うと、(一次変換については→「一次変換とは何か?を解説」)そのベクトルは回転したり、拡大・縮小します。つまり全く異なるベクトルになるわけです。

固有ベクトルと一次変換

<一次変換されたベクトル図>

ところが、そのベクトルが“固有ベクトル”の場合には「向きの変化=回転」が起こらず、大きさ=すなわちベクトルの長さ“だけ”が変化するのです。

そして、一次変換をする前と後の”固有ベクトルの長さの比“こそが「固有値λ」なのです。

一時変換しても固有ベクトルの向きは変わらない図

<固有ベクトルを一時変換した場合>

・・・なんとなく”固有“という言葉が付いている理由が分かったでしょうか?

これらの性質を応用し、現代ではAI:人工知能の分野で固有値・固有ベクトルは大活躍しています。

(線形代数と機械学習(人工知能のなかの一分野)には切っても切れない関係があります。興味のある方はぜひ→「機械学習シリーズ一覧」を読んでみてください!)

固有値問題(λを求める手順)

さて、固有値の意味に触れたところで実際にλを求めてみましょう。

一般化した解き方では分かりにくいので、この記事では、2行2列の行列

$$B=\begin{pmatrix}
4 & 1 \\
6 & 5
\end{pmatrix}$$の固有値λと固有ベクトル$$A=\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}$$

を実際に求める手順を確認します。

定義より、以下の式を満たすAとλを求めていきます。

$$\begin{pmatrix}
4 & 1 \\
6 & 5
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=λ \begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}…(※)$$

第一段階:単位行列Eを右辺にかける

単位行列$$E=\begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix}$$は、「逆行列と行列同士の割り算」の記事でも解説しましたが、実数における『1』と同じように扱えます。

そこで、(※)の式の右辺にEをかけます。

$$(右辺)=\begin{aligned}=λ \begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}
λ & 0 \\
0 & λ
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}\end{aligned}$$

途中の計算式がわからない方は→「行列の計算(スカラー倍・和・差)」を再確認してください。

第二段階:移項して固有ベクトルでくくる

次に、右辺を左辺に移項した上で、固有ベクトルでくくります。

$$\left( \begin{pmatrix}
4 & 1 \\
6 & 5
\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}
λ & 0 \\
0 & λ
\end{pmatrix}\right) \begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=0$$

行列の部分を足して、整理すると

$$\begin{pmatrix}
4-λ & 1 \\
6 & 5-λ
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=0$$

第三段階:行列式から固有方程式を作る

行列部分を仮にLとおきます。このLは逆行列を持ちません。

したがって、Lの行列式:det L=0。<参考:「逆行列と行列式~行列の割り算は存在するか?~」>

これを利用して、Lの行列式から、λの方程式(固有方程式と呼びます。)を作ります。

$$\det L=( 4-λ) ( 5-λ) -( 1×6)$$

第四段階:固有方程式を解いて固有値を2つ求める

$$\det L=λ ^{2}-9λ +14=(λ-7)(λ-2) $$

よって、固有値λ=2、または7であることがわかりました。

固有ベクトルを求める

固有値が求まれば、あとは式に代入していきます。

定義の式(※)より、

$$\begin{pmatrix}
4-λ & 1 \\
6 & 5-λ
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=0$$

(1)λ=2の時

$$\begin{pmatrix}
2 & 1 \\
6 & 3
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=0$$

(2)λ=7の時

$$\begin{pmatrix}
-3 & 1 \\
6 & -2
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}=0$$

行列と固有ベクトルを掛けて式を作る

λ=2のとき

(2x+y)+(6x+3y)=0

8x+4y=0・・・(1)

λ=7のとき

(-3x+y)+(6x-2y)=0

3x-y=0・・・(2)

x、yを満たす数を選ぶ

ここで、上2つの式の(x、y)を満たす数を選びます。

この際、選ぶ数の組は無数にあるので、なるべく簡単なものを選びましょう

今回は、(1)を満たす(x、y)=(1、-2)、(2)を満たす(x、y)=(-1、-3)とします。

・・・・・・

この記事の頭のほうで、固有ベクトルは一次変換しても向きが変化しないベクトルであることを紹介しました。

ここでは具体的なベクトル(xyの組み)を選びました。(分野は異なりますが、、)整数の不定方程式(→「一次不定方程式の一般解の求め方」)で一般解を表したように、適当な文字を使うことで、λに対するあらゆる固有ベクトルを表すことができます。(現在作成中)

固有値と固有ベクトルをまとめる

かなり長かったですが、これで固有値λと固有ベクトルAが求まりました。

$$行列B=\begin{pmatrix}
4 & 1 \\
6 & 5
\end{pmatrix}$$

$$固有値λ=2のとき、固有ベクトル(の一つ)は\begin{pmatrix}
1 \\
-2
\end{pmatrix}$$

$$固有値λ=7のとき、固有ベクトル(の一つ)は\begin{pmatrix}
-1 \\
-3
\end{pmatrix}$$

固有値/固有ベクトルのまとめと線形代数入門シリーズ一覧

今回は2×2の行列のλ、Aについて求めましたが、3×3、などのさらに複雑な行列のAや、λ(今後の記事で紹介します)を求める際の基礎となるので、よく復習しておいてください!

次回は、この記事で学んだ固有値・固有ベクトルを使って行列を「対角行列」にする「対角化」と、対角化を応用して行列のn乗を求める方法を解説します。

→対角化・対角行列とn乗を作成しました。以下のリンク(第6回)より続けてご覧ください。

線形代数(行列)入門シリーズ一覧

>>「【随時更新】線形代数シリーズ:0から学べる記事総まとめ【保存版】」を読む<<

第0回:「集合と写像をわかりやすく:線形代数への道しるべ

第1回:「線形代数の意味と行列の足し算・引き算・スカラー倍

第2回:「行列どうしの掛け算の手順をわかりやすく!

第3回:「逆行列と行列の割り算、正則行列について

第4回:「一次変換(線形変換)とは?

第5回:「今ここです」

(NEW!)

第6回;「対角化/対角行列の意味と手順をわかりやすく解説!行列のn乗への応用も

 

最後までご覧いただき誠にありがとうございました。

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