助動詞シリーズ:第三回(古文第六回)
<この記事の内容>:前々回の「古典文法:助動詞の覚え方・学び方」の続編として、
『未然形接続』タイプの助動詞の意味・活用などを紹介します。
(前回の:「”連用形”接続のグループまとめはこちらから」)
目次(タップした所へ飛びます)
未然形グループ
前回同様、接続によって分けていきます。
今回は『動詞の未然形』+『助動詞』の組み合わせとなる「未然形グループ」を扱います。
このグループには、4つの意味がある『る・らる』や、5つ!も意味がある『む・むず』といった助動詞を含みます。
識別をするのが初めは大変な場合もありますが、この記事でうまくインプットして、演習問題等に取り組むことで、必ず攻略可能です。
”未然”の振り返り
未(いまだにおきていない)然(状態)のことを意味します。
未然形グループ其の一
未然形グループの中でも(1)では、意味が同じ(ら/らる)と、(す/さす/しむ)の2つのカタマリに分けて解説します。
またこのグループ其の一は『活用がすべて【下二段】のタイプ』であるので、まとめて覚えてしまいましょう!
『受身/可能/尊敬/自発』の「る・らる」
いきなり4つも意味を持つ助動詞が出てきましたが、一つずつ見ていきます。
『る』と『らる』の意味
・「受身」:〇〇される
受身、英語で言う受動態と似ています。
・「可能」:〇〇できる
・「尊敬」:〇〇なさる
・「自発」:自然と〇〇になる
先述しましたが、実際に文を読み進める時には、これらの4つのうちどの”意味”で使われているのかを『識別』する必要があります。
識別には一種のコツが存在します。
例えば『打消とともに現れると【可能】』、『身分の高い人の動作についていれば【尊敬】』など・・・完全ではありませんが、大抵はこういった方法で乗り切れます。
(助動詞編の最後の回に”識別編”を設けて、コツを一気にまとめます。今は『意味』+『活用』を覚えるようにしておいて下さい。)
『る・らる』の活用
先ほど書いた通り、ともに下二段活用で『らる』は『る』の頭に「ら」をつければ良いので、『ラ行の下二段』であることだけ覚えておきましょう。
『尊敬/使役』の「す・さす・しむ」
意味はいずれも2つだけなので、この3つも一気に覚えてしまいましょう。
『す』『さす』『しむ』の意味
・尊敬:〇〇なさる
先ほども出てきました。
・使役:〇〇させる
”使役”は言葉が少し難しいかもしれませんが、英語でも”使役動詞”を習っているはずです。(make,have,get,etc,,,)
『す・さす・しむ』の活用
3回目になるのでもう大丈夫だと思いますが、『全て下二段』です。
また、”さす”は”す”の活用に”さ”を加えたもの(=らる・るの関係と同じ)なので、覚えることは「サ行下二段」であることと、『しむの活用』だけです。
未然形グループ(其の二)
グループ2では、これまでのシリーズで出てこなかった『意味』や『活用のタイプ』を持つものを中心に紹介します。
『打ち消し』の「ず」
まずは『打ち消し』の意味を持つ『ず』。
『ず』の意味
・打消:〇〇でない
『ず』の活用
この活用表をみると、2種類にわかれているので『形容詞の活用パターンを使えないか?』と思う方もいるかもしれないのですが、残念ながら形容詞タイプとは全く別に覚えないといけません。
(注):助動詞が先ほどの表のように、2つに割れているとき右側を『本活用』、左側を『補助活用』といい、助動詞が後に助動詞をとる場合には、『補助活用』を用います。
『推量/ためらいの意志/反実仮想』の「まし」
「まし」は意味に注意!
『まし』の意味
・推量:〇〇だろう
・ためらいの意志:〇〇しようかな
(〇〇しよう!という『意志』 +ためらい)
・反実仮想:もし××だったら〇〇だったろうに
(反実仮想は英語の『仮定法』の訳に似ていますね。)
『まし』の活用
これも他に当てはまるタイプがありません。
『しか/●/し/し/しか/●』と唱えて覚えましょう。
『(打消)推量と(〃)意志』の「じ」
推量・意志を打ち消す『じ』を見ていきます。
『じ』の意味
・打消推量:〇〇では無いだろう
・打消意志:〇〇するつもりは無い
『じ』の活用
このグループ2最後の『じ』も、これまで同様に少々変わっていますが、
・「●/●/じ/じ/じ/●」
と”終止”・”連体”・”已然形”のみ存在し、全て『じ』であることから、比較的覚えやすいはずです。
未然形グループ其の三
活用が少し特殊(ですが、『用言の知識が使えます!』)な『まほし』と、
意味が5つある
・『む』
・『むず』を扱います。
『希望』の「まほし」
『まほし』は意味は一つだけでなので、ややこしいく感じるのは活用の方です。
この活用は一見難しそうですが、前回までの記事を読んでいる人なら、すぐに”あるタイプ”であることに気付くはずです。
『まほし』の意味
・希望:〇〇したい
の一つだけです。
『まほし』の活用
この2つに活用が分かれている表は、久々の”形容詞(のうちの『シク活用』)タイプ”です。
忘れてしまった・覚えていない人は→「形容詞・形容動詞の活用を解説」へ
先ほどの『ず』でも書きましたが、『(まほし)』 +『助動詞』の場合には表の左に記載している、補助活用を用いることになっています。
『推量/意志/仮定/勧誘/婉曲』の「む・むず」
最後は5つの意味を持つ『む、むず』。
意味の多さだけでなく、「む」と「むず」で活用の種類も違うので、今回の中では一番覚えるのが大変かもしれませんが、これで『未然グループは終了』なのでもうひと頑張りです。
『む』と『むず』の意味
・推量:〇〇だろう
・意志:〇〇しよう
・仮定:〇〇ならば
・勧誘:(〇〇するの)がよい
・婉曲:(〇〇の)様な
『勧誘』・『婉曲』あたりは訳が少々難しいでしょうか?
(参考):この5種類を覚えるための有名なゴロに、『す・い・か・か・え』=『推量(す)・意志(い)・仮定(か)・勧誘(か)・婉曲(え)』=『スイカ買え』というものがあります。
しかし、ゴロは自分で考え出したものの方が覚えやすい(+ゴロを考える時には、その意味や文字をしっかり見ているので、単に暗記するよりも定着しやすいです)ので、ぜひ自作にも挑戦してみて下さい。
『む』と『むず』の活用
む・むずはそれぞれ
・『む:四段活用』
・『むず:サ行変格活用』のタイプで活用し、
ともに:未然・連用・命令形の3つは存在しません。
(ex,”む”の場合:●/●/む/む/め/● )
まとめと続編へ
今回は初めて出てくる意味や活用を持つものが多く、少し大変だったかもしれません。なんども復習しておきましょう。
助動詞シリーズも折り返し地点まで来ているので、これまでの内容を振り返りつつ完全に覚えていきましょう。
関連記事一覧
〜古典文法シリーズ〜
第一回:「古典文法を0から解説!10品詞の意味」
第二回:「動詞の活用と覚え方のコツ」
第三回:「形容詞・形容動詞の意味と活用、覚え方を紹介」
>>助動詞攻略編<<
第四回:「助動詞の勉強法/覚え方のコツ(総論)」
第五回:「連用形に接続するグループのまとめ」
>第六回:「(今ここです)」
>>第七回:「終止形接続のグループまとめ」
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