天然高分子化合物第2回
天然高分子化合物第1回に引き続きまとめて行きます。
今回はタンパク質とペプチドの検出反応の種類とメカニズムの解説です。忘れやすい検出反応も、その仕組みを理解すれば忘れず、ムダな丸暗記をせずに済みます。
目次(タップした所へ飛びます)
天然高分子化合物シリーズ
第1回の記事でまとめた内容
・この記事とシリーズを読むべき理由
・天然高分子化学の概観
・基本単位(モノマー)である“アミノ酸”
・双性イオンと等電点
・覚えておくべき接頭辞
・アミノ酸を覚える前に
・主要なアミノ酸の名称・性質
・ペプチドとは?
・タンパク質とペプチドの違い
今回まとめる内容
・タンパク質/ペプチドの検出方法
・検出反応の仕組み
次回以降まとめる内容
・タンパク質の構造
・タンパク質の性質と各種タンパク質
・DNAとRNAの違いと構造
・糖類概観
・単糖類の種類と性質
・二糖類/多糖類の種類と性質/構造
タンパク質/ペプチドの検出方法
高分子の構造決定やアミノ酸配列の決定などの際に、それがどの様なアミノ酸から構成されているか、ペプチドの数が幾らくらいか、を調べる為に様々な試薬を加えて反応を調べます。ここでは高校化学で必要な4つの検出反応を紹介します。
また、大まかな反応原理については電気陰性度や有機化学反応(応用)の知識を使うので以下の記事を先にご覧下さい。
1:ビウレット反応
目的:化合物がトリ(3)ペプチド以上かどうか。
方法:CuSO4水溶液とNaOH水溶液の混合液を対象の化合物に加える。
結果:トリペプチド以上の場合赤紫色に呈色
反応原理:検出対象のペプチド/タンパク質中のペプチド結合ーCONHーに於いて、NとHの電気陰性度の差から共有電子対がNの方へ引っ張られ、水素はHδ+とわずかに正に帯電します。
ここで、NaOHのーOHがHδ+とくっ付きH2Oが生成されます。すると今度は、窒素が右の様に非共有電子対を持ってしまいます→ N:この非共有電子対とCu2+が結合し、呈色します。
(この際電荷の数に注意すると、N:(−1)に対してCu2+(+2)なので結合にはN:が2つ、即ち元々のペプチド結合が2つ必要です!だからαーアミノ酸や、ジペプチドでは呈色せず、トリペプチド以上で呈色するのです)
2:キサントプロテイン反応
目的:ペプチド・タンパク質にベンゼン環を含むαアミノ酸が含まれているかどうか。
方法:濃HNO3水溶液を加え加熱します。
結果:ベンゼン環を含む場合黄色に呈色します。
この反応原理の理解を助ける記事は以下(ベンゼン環の正体)
反応原理:有機化学反応および上の記事で紹介した様に、芳香族求電子置換反応によりベンゼン環にNO2+がくっ付き(ニトロ化)黄色に呈色します。
*ここから先は興味のあるハイレベル生向けcolumn
ちなみに、、、ここでのニトロ化では混酸を構成する濃硫酸が登場していない事に気が付きましたか?
本来ニトロ化には、濃硫酸が不可欠です。実際、ベンゼン環を含むフェニルアラニンは十分にニトロ化が進みません。
しかし、ベンゼン環にーOH基が付いているアミノ酸(チロシン等)はーOH基の酸素原子が余っている非共有電子対をベンゼン環へ流し込むため、隣であるオルト位の電子密度が高まり(ーに傾く)、結果HNO3+を引き寄せニトロ化します。
この様な理由(さらに正確な理屈は大学で)で混酸が使われていないのですが、完全に高校範囲を逸脱しているので、試験では教科書通り「ベンゼン環を含むアミノ酸を含むペプチド・タンパク質は濃硝酸で呈色」と書いておいて下さい。
*column終わり
3ニンヒドリン反応
目的:αーアミノ酸及びそれらからなるペプチド、タンパク質の検出
方法と結果:ニンヒドリン溶液を加えて加熱すると、青紫〜赤紫に呈色。
反応原理:二段階の求核反応と反応物、生成物ともに複雑な為省略します。
4硫黄反応
目的:硫黄を成分とするαーアミノ酸を含むペプチド・タンパク質の検出
方法と結果:NaOH水溶液及びPb(CH3COO)2水溶液を加えて加熱すると黒色沈殿生成。
反応原理:NaOHのーOHによって、αーアミノ酸のーSH部分が置換され、遊離したーSHとーOHが更に反応してH2OとS2ーになる。
ここで、Pb2+とS2-が結合し、黒色のPbSが沈殿する。
第三回:タンパク質の構造とDNA・RNAへ進む
いかがでしたか?冒頭でも書きましたが、単に4種類の検出法を暗記するのではなく、反応の理由まで考えると記憶が定着し易くなります。
次回はタンパク質の構造から始めます
<今ここです>第二回:タンパク質/ペプチドの検出反応4選!仕組み理解で2度と忘れない方法
今日もご覧頂き有難うございました。
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