
ライプニッツ・メルカトル級数の解法
<この記事の内容>:積分法を応用して、無限級数を求める問題の中でも特に有名な『(ニュートン)メルカトル級数』と『(グレゴリー)ライプニッツ級数』について、様々な問題の中でも共通の解法・手順を解説しています。(追記中です)
<関連記事・まとめ>:「微分積分(数Ⅲ)の解説まとめページ」・「β関数の問題と応用」:「積分漸化式4パターンまとめ」
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メルカトル級数/ライプニッツ級数とは
この二つの級数(数列の和の極限)は、以下で紹介する有理数の足し引きを繰り返すことで、最終的に興味深い無理数に帰着します。
メルカトル級数と\(\log{2}\)
次のような数列
\(1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\cdots \)
を足し合わせていくと(無限級数)は=\(\log{2}\)となります。
ライプニッツ級数と\(\frac{\pi}{4}\)
一方でライプニッツ級数と呼ばれる方は、
次のような数列
\(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\cdots \)
の無限級数が=\(\frac{\pi}{4}\)になります。
このように、有理数の無限級数がネイピア数(e)や円周率πと繋がるのは面白く、不思議です。
共通する解法:余計な部分を0にせよ!
メルカトル、ライプニッツ級数については多種多様な問われ方をするのですが、その解法は結局のところ次のstep1〜4(順番は変化することがある)を行う「ワンパターン」です。
step 1:部分和を公式で求める
まず、上で紹介したような級数が与えられるので、「等比数列の和の公式」で部分和を求め式で表します。
step2:両辺を積分すると不要な部分が生じる
step1の両辺を0→1で定積分しようとすると、部分和と$$\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x}dx,or,\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x^{2}}$$の他に“邪魔な部分”が生じます。
step3:不要な部分を評価して0へ飛ばす
この“ジャマ”な部分を不等式などで評価し、∞へ飛ばすと→0になるように上手く変形します。
step4:2の式を置換積分する
最後に、step2の定積分を「置換積分の特別な置き換え」を用いて行います。
メルカトル/ライプニッツ級数の例題
ここでは、上で解説した流れに沿って実際に【メルカトル級数・ライプニッツ級数】を求める問題を解きながら知識と解法を定着させます。
確認問題
以下の問題を解け。
(1)、(2):以下の式で表される右辺の式\(P_{n}(x)\)と\(Q_{n}(x)\)を求めよ。
\(\begin{aligned}\frac{1}{1+x}-\{1-x+x^{2}-x^{3}\cdots (-x)^{n-1}x^{2n-2}\}=P_{n}(x)\\\frac{1}{1+x^{2}}-\{1-x^{2}+x^{4}-x^{6}\cdots (-1)^{n-1}x^{2n-2}\}=Q_{n}(x)\end{aligned}\)
(3):\(\begin{aligned}\lim_{n\rightarrow\infty}|\int_{0}^{1}P_{n}(x)dx|\\\lim_{n\rightarrow\infty}|\int_{0}^{1}Q_{n}(x)dx|\end{aligned}\)が0となる事を示せ。
・(hints!:P_{n}(x)とQ_{n}(x)共に絶対値をとって、簡単な定積分で挟めないかを考えてみましょう)
(4):つぎの2つの(数列の和)の極限(無限級数)を求めよ。
(4-1):\(1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\cdots +\)
(4-2):\(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\cdots +\)
解法解説
まず(1)、(2)を見ていきます。左辺の\(\frac{1}{1+x}と\frac{1}{1+x^{2}}\)がある事と、\(\{数列の和\}\)がある時点で有名な級数の問題であることに気付いておきたいところです。
(1):の\(\{1-x+x^{2}-x^{3}\cdots (-x)^{n-1}x^{2n-2}\}\)この部分を等比数列(\(a_{n}\)とする)の
\(a_{n}はa_{1}=1,公比(-x)\)なので
和の公式を使って表すと、部分和$$Sn=\frac{1-(-x)^{n}}{1+x}$$
\(\frac{1}{1+x}-Sn=Pn(x)\)を計算すると、\(P_{n}(x)=\frac{x^{n}}{1+x}\)
(2):の\(\{1-x^{2}+x^{4}-x^{6}\cdots (-1)^{n-1}x^{2n-2}\}\)も同様に(こちらを\(b_{n}\)とする)
\(b_{n}はb_{1}=1,公比(-x^{2})\)なので
和の公式より、部分和$$S‘n=\frac{1-(-x^{2})^{n}}{1+x^{2}}$$
\(\frac{1}{1+x^{2}}-S’n= Q_{n}(x)\)だから、\(Q_{n}(x)=\frac{(-x^{2})^{n}}{1+x ^{2}}\)
(3):ここが最大のポイントです。上手く不等式などで評価してあげて、はさみうちから→0を証明しなければいけません。
記事の最後にも記載しましたが、評価するヒントor不等式を問題文で与えてくれている場合は比較的楽です。
が、そうでない出題をされた時のためにも(積分+不等式+評価)の問題をできるだけこなしておきましょう。
まず絶対値を取る事で(-1)の部分を消して、残った以下のPn(x)、Qn(x)をそれぞれ楽に積分できる\(x^{n}とx^{2n}\)で上から挟みます。
(3-1):分母である“1+x”は積分区間x:0→1において
$$\frac{x^{n}}{1+x}<\frac{x^{n}}{1}$$
右辺を積分すると\([\frac{x^{n}}{n+1}]_{0}^{1}=\frac{1}{1+n}\)
$$\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{1}{1+n}=0$$なので、はさみうちの原理より
$$\lim_{n\rightarrow \infty}\int_{0}^{1}Pn(x)dx=0・・・(3-1)$$
$$\frac{x^{2n}}{1+x^{2}}<\frac{x^{2n}}{1}$$
同様にして、
右辺を積分すると\([\frac{x^{2n}}{n+1}]_{0}^{1}=\frac{1}{1+2n}\)
$$\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{1}{1+2n}=0$$
したがって、はさみうちより$$\lim_{n\rightarrow \infty}\int_{0}^{1}Qn(x)dx=0$$
(4):の(1)・(2)共に問1・問2の数列を0→1の範囲で定積分したものになっています。
(1)の式とPn(x)=0、Qn(x)=0より、
\(\begin{aligned}\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+x}dx=\{1-x+x^{2}-x^{3}\cdots (-x)^{n-1}x^{2n-2}\}\\
\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+x^{2}}dx=\{1-x^{2}+x^{4}-x^{6}\cdots (-1)^{n-1}x^{2n-2}\}\end{aligned}\)
ここで、\(\begin{aligned}\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+x}dxはそのまま定積分し、\\\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+x^{2}}dxはx=\tan xと置くと\end{aligned}\)
\(\begin{aligned}\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+x}dx=\log 2\\\int ^{1}_{0}\frac {1}{1+(\tan x)^{2}}dx=\frac{\pi}{4}\end{aligned}\)
よって、
\(\begin{aligned}1-\frac {1}{2}+\frac {1}{3}-\cdots =\log 2\\
1-\frac {1}{3}+\frac {1}{5}\cdots =\frac {\pi }{4}\end{aligned}\)
重要事項のまとめ
・上のような流れで2つの級数がlog{2}と\pi/4になる事が示せました。
・誘導がどの位ついて出題されるかは大学・学部によりますが、上位レベルを目指している人は特に《「邪魔な式」の評価→極限を取る》の所を出来るだけ自力で出来るように、多く類題に触れておきましょう。
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