色々な関数の発散速度比較
<この記事の内容>:数三の微積分や極限で必ず必要になる「関数の発散の順序」を、感覚的にではなく実際に証明問題を解きながら整理していきます。
<関係するまとめ記事>:「極限を得意にする8記事+α」・「数学Ⅲ:微積分とその応用まとめ」
目次(タップした所へ飛びます)
関数の発散の速さ(順序)
一番はじめに、各関数の発散速度の順を載せておきます。
\(\log{x}<x^{n}<e^{x}<x!(Γ関数を用います)<x^{x}\)
\(e^{x}\)(指数関数)と\(x^{n}\)
上にあげた順序の中で、(特に高校の範囲では)\(x^{n}とe^{x}\)が重要、かつ、入試などでも問われやすいです。
証明問題
今、x>0かつ0以上の整数nについて、
問1
$$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{n}}{n!}$$・・・(1)
を示せ。
問2
次に$$\lim_{x→\infty}\frac{x^{n}}{ e^{x}}$$を(1)をヒントにして証明せよ。
これを証明できれば、後は式変形だけで比較的簡単に示せるので頑張りましょう。
解答と解説
帰納法→ハサミウチの順に解いていきます。
解答1:数学的帰納法の利用
”nについて”の証明なので、数学的帰納法を用います。
(参照:「数学的帰納法の仕組みとコツ」)
以下$$g{n}(x)=e^{x}-\{1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{n}}{n!}\}$$・・・(2)として、この式が常に正ならば(1)が示せます。
まず、n=1の時、
\(g_{1}(x)= e^{x}-(1+x)\)・・・(3)
これを微分して、\(g‘_{1}(x)= e^{x}-1\)
x>0のとき\(g‘_{1}(x)>0\)なので(3)は単調増加。x=0で(3)は=0。
よって、n=1のとき\(g_{1}(x)= e^{x}-(1+x)\)はx>0で常に正。
n=kの時
$$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{k}}{k!}$$
が成立すると仮定して、・・・(4)
n=k+1の時、
($$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{n}}{n!}+\frac{x^{k+1}}{(k+1)!}$$を示すことが目標です)
$$g_{k+1}(x)=e^{x}-\{1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}\cdots +\frac{x^{n}}{n!}+\frac{x^{k+1}}{(k+1)!}\}$$とおく。
ここで\(g_{k+1}(x)\)を微分すると、
$$g’_{k+1}(x)=e^{x}-\{1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{k}}{k!}\}$$
と非常にきれいに“足し合わせている部分”の分母分子が打ち消し合って、\(g’_{k+1}(x)=g_{k}(x)\)となっています。
(4)の仮定より、\(g’_{k+1}(x)>0、かつ、g_{k+1}(0)=0\)だから、x>0において\(g_{k+1}(x)\)は常に正。
従って、n=k+1のときも仮定が成り立つので数学的帰納法より、$$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{n}}{n!}$$
が示せた。
解答2:はさみうちの利用
$$\lim_{x→\infty}\frac{x^{n}}{e^{x}}$$
\(e^{x}とx^{n}\)、、、明らかに(1)を使うことがわかります。
$$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}+\frac{x^{2}}{2!}+\cdots +\frac{x^{n}}{n!}$$・・・(1)より、
$$e^{x}>\frac{x^{n}}{(n)!}$$
逆数を取ってみますが、
$$\frac{1}{e^{x}}<\frac{(n)!}{x^{n}}$$
となって
これではうまくいきません。(はさみうちが使える形ではない)
そこで、もう一つ足し合わせる部分の項を増やしてみます。
すると、
$$ e^{x}>1+\frac{x}{1!}\cdots +\frac{x^{n}}{n!}+\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}>\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}$$だから、
ここで、両辺の逆数を取って
$$\frac{1}{e^{x}}<\frac{(n+1)!}{x^{n+1}}$$
\(x^{n}\)が残るように\(x^{n+1}をx\cdot x^{n}\)に分けることにより
$$0<\frac{x^{n}}{e^{x}}<\frac{(n+1)!}{x}$$
ここで(n+1)!は極限に関係しない定数なので、
$$\lim_{x→∞}\frac{(n+1)!}{x}=0$$
よって、ハサミウチより$$\lim_{x→\infty}\frac{x^{n}}{e^{x}}=0$$
が示せました。
ベキ乗・多項式・対数関数などの順序の整理
ここまでの問題で示した\(\lim_{x→\infty}\frac{x^{n}}{e^{x}}=0\)をもとにその他の関数と\(x^{n}\)の発散速度の比較を行います。
多項式と指数関数
問2で示したように、\( e^{x}がx^{n}\)よりもはるかに発散速度が早いです。またn=1を代入して\(e^{x}<x\)。
多項式xと対数関数
対数関数との順序比較は先述したように、簡単な式変形を行います。
\(\log{x}とx(n=1)\)のどちらかを分母・もう片方を分子にして極限をとる事で示します。
$$\lim_{x→\infty}\frac{\log{x}}{x}=?$$
\(\log{x}=u\)とおくと、 eをu乗したものがxより
\(x= e^{u}、またx→∞のときu→∞なので\)
$$\lim_{u→\infty}\frac{u}{e^{u}}$$と置き換えることができ、これは問2で示した形で0に収束します。
従って、発散速度は\(u<e^{u} すなわち\log{x}<x\)
となります。
階乗と\(e^{x}\)(Γ関数について)
\(e^{x}よりもx!\)が発散速度は速いです。
階乗が自然数n!の時ならば、二項定理を用いて証明できるのですがx!(xが飛び飛びの値ではなく連続している場合)は高校範囲を超えます。
詳しくはガンマ関数と呼ばれる(「ベータ関数と積分漸化式」でのβ関数と深い関係があります。)関数を導入しなければいけません。
したがって、今のところは順序だけを覚えておきましょう。
全体としての順序
まとめると
\(\log{x}<x^{n}<e^{x}<x!<x^{x}\)
という風になります。
まとめ
今回解説した発散速度の順序は、極限はもちろん微積分の応用でも頻繁に利用します。
また、証明問題も類題がよく出るのでぜひ何度も復習しておいてください。
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