微分と増減表は最後の手段!グラフを描く順序
この記事は、
・グラフを描かせる問題や、求積問題で直ぐに増減表をつくっている人へ
・数学Ⅲの微積を解くスピードと、計算ミスが”大幅に”減る「本質的な」グラフの推測法
を解説したものです。
【NEW!】2019/04/06:関連記事「数学Ⅲを得点源にする為の勉強法」を作成しました。
目次(タップした所へ飛びます)
増減表を描かずにグラフをかく
・2通りのグラフの描き方
・下の方法を勧める理由
・グラフを推測するためにするべき3つの事
・具体例を見てみる
グラフの描き方2パターン
皆さんは、「グラフをかけ」という問題や、「グラフを使って調べる(ex、共有点の個数)」際に何も考えずに微分して、もう一度微分して、増減表をかいて・・・としていませんか?
決して間違いではないですし、教科書通りの「適切」な手順ですが、特に数学Ⅲを得意にしたい場合、筆者は別の手順で進めるべきだと考えています。
(普通) 関数→微分(細部を調べる)→グラフ全体
<この”普通の方法”は当然完璧にしておかなければいけません。不安のある人は→「三次関数のグラフの描き方」←で”増減表”を使った方法を再確認しておきましょう。>
(推奨)関数→グラフ全体を思い浮かべる→微分
なぜ、この方法を勧めるか。
理由は幾つかあります。
数学Ⅲで扱う関数は特に複雑なものが多いので、計算ミスをしやすく、また時間も掛かります。
・グラフ全体のおおまかなイメージをせずに微分を始めてしまうと、ミスに気付かない恐れが非常に高いです。
・また、到達するグラフの見通しが立っていないので、効率的に必要な計算だけする=計算にかける時間を削る事が出来ない事も理由の一つです。
・そして最大の理由は、この方法に慣れる事で数学が「見えて」くる、という無視出来ない効果があるからです。
グラフをイメージする方法
利点が多いこの方法ですが、言うは易く行うは難しな面もあります。そこで最短で身に付ける為にするべき事を紹介します。
(1)最低限の基本的なグラフの形は覚えておく
指数関数や対数関数、基本的な分数・無理関数などのグラフは前もって頭に入れておきます。
$$y=e^{x},y=\log x,y=\frac {1}{x}$$
$$y=\frac {1}{\sqrt {x}},y=\sqrt {x}$$
等々一通りの有名なグラフの形は覚えておきましょう。
(2)グラフの符号が変化するxの値や、分母が0になるxの値を抑える。
y=(xー2)(x+3)ならば、x=2、-3を境に符合が変わるのでx=2、-3をチェック
y=1/x ならば、x=0を取れないのでx=0の左右極限を調べる。等。
(3)limx→±∞や、片側極限などの計算に慣れる
上述した様に、左右極限やxを±∞へ飛ばした時の計算を早くする為に、極限計算の練習をする。
<参考:「極限を得意にするための解説記事まとめ」>
では実際にどの様に進めるかを見ていきます。
例題の関数は筆者が執筆中に思いついた(てきとうな)ものです。
実際の手順
<例題>次の関数のグラフをかけ
y=(xー2)(x+3)/e^x
$$y=\frac {( x+3) ( x-2) }{e^{x}}$$
先ず、$$分数を外す為にy=( x-2) ( x+3) e^{-x}に変形し$$、
$$y=( x-2) ( x+3) ,y=e^{-x}$$のグラフをメモ程度に書きます。
<図1:問題の関数を構成する有名関数のグラフ(パッと頭に浮かぶようにする)>
次に、メモの<図1>より$$y=e^{-x}は常に正$$
y=(xー2)(x+3)は下に凸のグラフで符合はx=2、-3で変化する(∴x=2、-3の時y=0)事をチェックします。
$$するとy=( x-2) ( x+3) e^{-x}$$
のグラフがいるゾーンが大方推定できます。
<図2:予測したグラフの形>
後は、xを±∞へ飛ばした時の挙動をチェックし、大体のグラフの概形を描きます。
$$\lim _{x\rightarrow +\infty }( x-2)( x+3) e^{-x}=0$$
$$\lim _{x\rightarrow -\infty }( x-2)( x+3) e^{-x}=+\infty $$
ここ迄でほぼグラフは出来てしまうのですが、変曲点や極大極小を問われる場合は、ここでやっと微分をします。
(逆に厳密な事が問われず、体積や面積を求めるだけなら、このまま積分に進みましょう)
先ほども言いましたが、既に概形が分かっているので、ミスの可能性と計算チェックの時間を大幅に削れます!
$$\begin{aligned}y=( x-2) ( x+3) e^{-x}\\
=( x^{2}+x-6) e^{-x}\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}y'=( 2x+1) e^{-x}-( x^{2}+x-6) e^{-x}\\
=-e^{-x}( x^{2}-x-7) \end{aligned}$$
数字が汚くなってしまいましたが、$$x=\frac {1\pm \sqrt {29}}{2}$$で極大極小をとるようです。
今回はグラフを書くのが目的なので、<図1>〜<図2>より、
例題のグラフは下の様になります。
<極値まで調べたグラフの概形>
まとめと数学3:微積分の関連記事へ
この方法は慣れるのに少し時間が掛かりますが、一度習得すると式を見ただけで大体の関数のグラフがイメージできる様になります。
計算のスピードと正確さが命運を分ける数3においては、特に重要なスキルなので、是非色々なグラフを自分で試行錯誤しながら作って見て下さい。
>>NEW!:「数学3を得点源にして合格する為の勉強法【予習・復習編】」
その「積み重ね」がやがて大きな差になります。
今回もお疲れ様でした。
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