助動詞シリーズ第二回(古文:第五回)
<この記事の内容>:前回の「古典文法4:助動詞の覚え方・学び方」の続編として、『連用形接続』グループの助動詞をまとめ、その意味・活用などを紹介していきます。
目次(タップした所へ飛びます)
連用形グループ
見出しにも書きましたが、この記事では連用形”接続”の助動詞(文字通り、『連用形』の下に来る「助動詞」のこと)を集めました。
品詞の振り返り
マップを使って、活用する品詞を再チェックしておきましょう。
【用言】は『自立語』のなかでも特に活用する『動詞』、『形容詞』と『形容動詞』の3種類でした。(下の図で囲っている部分です。)
また、付属語の中の助動詞も当然活用します。
(詳しくは『古典文法(その一):10品詞の総まとめ』をご覧ください)
助動詞一覧(其の一:つ・ぬ・たり・り)
まずは、『つ・ぬ・たり・り(*)』の活用表を見て、次にそれぞれの覚え方や注意点などを解説します。
(*)『り』のみ連用形接続では有りませんが、意味と活用の観点からこのグループに入れています。
完了、強意の助動詞「つ・ぬ」
”つ”・”ぬ”・”たり”・”り”、に関しては『完了』の意味が共通しています。
しかし、それぞれ少しづつ違う点があるので、その点を紹介しながら覚えていきます。
『つ』と『ぬ』の意味
まずこの「つ」・「ぬ」が持つ2つの意味のうち、「完了」と「強意」をそれぞれ紹介すると、
「完了」は:(〇〇し)た という風に訳します。
重要な方はどちらかというと次の『強意』です。
「強意」:きっと(〇〇だ)
ではどの様に強意であるかを見分けるのか?というと、ごく単純に「つ、ぬ」+「推量の意味を持つ助動詞」のかたちであれば、「完了ではなく強意」と判断します。
そのためにも、推量の助動詞(今回のグループでは、下で紹介する『けむ』)を知っていないといけないのですが、種類が多いため助動詞シリーズの最後に網羅した時点で、『識別編』を作成してまとめます。
『つ・ぬ』の活用
『つ』:「te/te/tu/tuる/tuれ/teよ」と、"u"音とその一個したの"e"音で活用しています。
この形は『下二段活用』でした。
また、
ぬ:ナ行変格活用
『ぬ』:表の”ぬ“の部分を見ると、『ナ変』そのままですね!
このように、動詞のナ変は『死ぬ・往ぬ』のみでしたが、用言の活用をきっちりと抑えておくことで、助動詞の活用の記憶のために割く労力がグッと少なくなります。
助動詞「たり」と注意すべき「り」
さて、次は「たり/り」を学びます。
先ほど(*)にも書きましたが、“り”のみ接続が違う点に注意しておいてください。
『たり』と『り』の意味
ともに、「完了・存続」の意味を持ち、
(〇〇し)た・・・完了
(〇〇し)ている・・・存続
という風に訳します。
『たり・り』の活用
たり:ラ変
り:ラ変
『たり・り』の表を見てみると、『たら/たり/けり/ける/けれ/たれ』・『ら/り/り/る/れ/れ』と、共に【ラ行変格活用】と同じ形をしていることが分かります。(またしても、用言の知識が役立ちました。)
助動詞(其の2:き・けり・たし・けむ)
さて、次は残りの連用形接続の助動詞(き・けり・たし・けむ)を同様に見ていきます。
過去の助動詞「き・けり」
『き』・『けり』は、共に古文において最頻出と言えるので、しっかりと理解して覚えておきましょう。
『き』と『けり』の意味
意味は単なる『過去』ではなく、それぞれニュアンスが違います。
キーポイントは『自らが直に体験した”過去”なのか』=このとき『き』を使います。
もしくは、『他人が体験した過去なのか(いわゆる”伝聞”過去)』=こちらの場合は『けり』を使います。
そしてもう一点。
『けり』の場合は、「詠嘆」の意味もあるので、その識別もしなければなりません。
詠嘆:(〇〇)だなあ
といった、「しみじみとした感情」などをあらわす際に用います。
過去なのか?詠嘆なのか?
ポイントとしては、和歌の中に入っている場合は、ほぼ必ず詠嘆の意味で用います。
そのほか『会話』の中にある場合も、『詠嘆』の可能性がありますが、和歌のときほど絶対ではないので、その他の情報を総合的に集めて識別する必要があります。
『き/けり』の活用
『き』の活用は、他の用言の活用に似たものがないので、残念ながら新たに覚えるしかなさそうです。(登場回数そのものが多いので、嫌でも覚えてしまうのですが・・・)
一方で、『けり』を見てみると、『けら/●/けり/ける/けれ/●』のように、一部分は●で欠落していますが、
この記事三回目!のラ変:”ら・●・り・る・れ・●”、型である事が分かります。
『連用・命令(形)以外はラ変』と覚えてしまいましょう。
助動詞「たし」
今回登場したグループの中では、活用の仕方が特徴的ですが、これまで通り用言の知識を使って覚えていきます。
『たし』の意味
基本的に意味はひとつだけです。
希望:(〇〇し)たい
《たし》の活用
たしの表を見ると、これまでの助動詞と違って2通りの活用に分かれています!
これは『形容詞』の『本活用・補助活用』の関係とそっくりです。
<たし>は『〜し』で終わっていますので、形容詞(のタイプ)をそのまま利用します。
(あやふやな人は→「形容詞/〃動詞の活用をわかりやすく!」を要チェックです。)
助動詞『けむ』
最後に『けむ』です。
けむの意味
過去の推量/〃の婉曲/〃の伝聞
推量は読んで字のごとく『推し量る(おしはかる≒推測する)』という意味です。
婉曲は、「遠まわし」の意味合いがあり、
伝聞は、「〇〇そうだ」
と言った意味で用います。さらに、そのそれぞれに「過去」が付いているので、
”過去”推量:(〇〇だった)だろう
”過去”の婉曲:(〇〇た)ような
”過去”の伝聞:(〇〇だった)とかいう
それぞれ上のように訳します。
活用
表を見ると、終止・連体・已然形しかありませんが、●/●/け”む”/け”む”/け”め”/●/
と"a/i/u/u/e/e"の形で活用する【四段型】であることが分かりましたでしょうか?
『らむ・む・けむ』について
今回は紹介していませんが、”けむ”には、『接続』と『意味の時制』(けむの『過去』でに対して、”む”が『(未来):普通の“推量”』、”らむ”は『現在』)が違うだけで、活用もほとんど同じ助動詞があります。
次回詳しく紹介しますが、一緒に覚えておくとよいでしょう。
記事のまとめと続編へ
さて、今回は(り、をのぞいて)【連用形接続のグループ】に絞り、その意味や活用などをまとめました。
次回は【未然形接続のグループ】を紹介します。
「強意」のところでも書きましたが、一通りの助動詞の紹介が終われば、文法問題で頻出の『識別』のコツを一気に解説します。
関連記事一覧
〜古典文法シリーズ〜
第一回:「古典文法を0から解説!10品詞の意味」
第二回:「動詞の活用と覚え方のコツ」
第三回:「形容詞・形容動詞の意味と活用、覚え方を紹介」
〜〜助動詞攻略編〜〜
第四回:「助動詞の意味と勉強法(総論)」
>第五回:「(今ここ)です」
>>第六回:「(作成中です)未然形接続の助動詞一覧」
今回も最後までご覧いただき、有難うございました。
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