素数問題と超重要な性質をもつ「ある」数とは
今回は、初めに『素数とは何か』の簡単な解説と注意点を紹介したのち、素数で唯一の性質をもつ”ある数”を多用する過去問を通して、整数問題、特に素数に関する問題への向きあい方を習得していきます。
一度経験していないと思い付くことが難しい内容もあるため、是非じっくりとご覧下さい。
なお、これまでの整数分野の記事まとめは→「整数分野の解法解説記事総まとめ」←をご覧下さい。
目次(タップした所へ飛びます)
素数とは
そもそも『素数』とは、『その数』と『1』の他に約数を持たない『正』の整数(自然数)のことでした。(=約数は2つ)例:(2,3,5,7,11,13.17・・・)
・ここで要注意なのは、1は素数ではない(『その数=1』と『1』は同じなので上の条件を満たしません。)
・素数の中でも偶数の素数『偶素数』は『2』だけである。ということ。(後述しますが、これが時に強力な条件になります。)
素数についての問題
早速問題を見ていきます。
\(a-b-8とb-c-8\)が素数となる、素数の組(a,b,c)をすべて求めよ。
(2014年 一橋)
非常に簡潔な問題文ですが、中々難問で、かつ思考力と経験が試される良問です。
(整数問題に自信がある人は20分を目安に解いて見て下さい。それ以外の方も、リンク→整数問題総まとめを参考にしながら10分は考えて見て下さい)
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解説に入る前に、素数と「2」について、、
唯一の偶素数2について
先ほど素数とは?のところで『2』について触れました。この項ではもう少し2について解説しておきます。
素数の問題では「2」と言う数字が非常に大切です。一番小さい素数と言うことだけでなく、「唯一の偶数の素数」であると言うことが最大のポイントです。
逆に、「素数で2より大きいものは全て奇数」である、とも言えます。
整数問題では偶奇を糸口に解答することがとても多いので、素数「2」は必ず頭に入れておきましょう。
素数問題の解き方(考え方)の手順
では解説を始めていきます。
条件整理
まず問題文より、a-b-8とb-c-8が素数になる素数の組( a,b,c) を求めるので、
a、b、c、a-b-8、b-c-8、の5つが全て素数である必要があります。
\(この時点で、\begin{aligned}a-b-8 >0⇔ a-b >8\\
b-c-8 >0 ⇔ b-c >8\end{aligned}\)
より、a >b,かつ ,b >cだから、a>b>cが確定します。
\(更に、\begin{aligned}a-b-8 >0⇔ a-b >8\\
b>c+8⇔ a>b+8\end{aligned}より、\)
a,b共に8より大きく素数だから、奇数になる…(1)
次の考え方は大切です。
ゆえに、a-b-8は、奇数ー奇数ー偶数だから、必ず偶数になる。
唯一の偶数の素数は2だから、a-b-8は2である!
よって、a-b=10
cの偶奇で場合分け
ここまでの条件を整理すると、
a>b>c 、かつ、 a-b=10 で、a=b+10とaが素数よりb+10は素数。
更に、b-c-8も素数である。
ここで、整数問題の定石絞り込み/場合分けを行います。
(a,b,c)の組みのうちcが分かれば、aもbで表せる事が分かるでしょうか?
と言ってもcは分からないので、偶奇で分けて見ます。
偶奇に着目する:cが偶数の時
cは素数かつ偶数より「2」である事が決定します。
そして、c=2とb-c-8が素数である事より、b-10も素数。
絞り込み:bをどうするか
従って、c=2の時、b+10,b,b-10の3つが全て素数となります。
次にすべき事は、bが全てに関わっているので、bの絞り込みです。
(1)より、bは奇数かつ8以上の素数でした。
そこで、奇数ー偶数=奇数よりb-10は奇数かつ素数。
と言う事は、b-10は一番小さくても3であると言えます。
そこで、\(b-10\geq 3⇔ b\geq 13\)
ここで一旦手が止まります。
整数問題攻略の3つの指針を知っていますか?
以下の記事で詳細に解説しているので、是非ご覧いただきたいのですが
整数問題(もちろん素数問題も含む)が出てきたときは下の3種類の指針を頭に思い浮かべます。
→「閃きやセンス無しで整数問題を攻略する為の3つの指針」を読む!
・指針1:(式)×(式)=整数 の形に持って行く。
(因数分解や素因数分解を使う→場合分けで解いて行く事が多い)
・指針2:条件式(問題文)から範囲を絞る
(例:A<B<C、ならば、A+B+C<C+C+C=3C、や偶奇わけ、判別式の利用、一文字消去、他)
・指針3:余りで分類
(3の倍数に関わる問題ならば、3m/3m+1/3m+2/の三つに分けてみる、他,,,)
bの絞り込みで悩んだら、
この3つのどれかが使えないか考えて見ます。
すると、今回は式× 式 は使えそうにありません。
(この方針は、主に2次式以上で活躍します)
次に、条件式から範囲を絞る。これはもう既にやってしまっています。
すると、あまりで分類が残ります。剰余類で分けると言うものです。これはまだ使っていません
当然、この指針で解けないものもありますし、知らなくても実験をしてみて、余りで分類するのではないか?と気付く事もあります。
しかし始めから頭の隅に置いておくと実験もスムーズに進みます。
(実験してみる):bは13以上の素数だから、適当に選んだbの値を(b-10,b+10)に代入してみると、
b=13の時(3,23)、b=19の時(9,29)、b=53の時(43,63)のように、(b-10,b+10)のどちらかに3の倍数が入っています
余りに注目して絞り込み
では、とりあえず3で割った余りでbを分けてみましょう
cが偶数、つまりc=2の時、bは13以上の素数より3の倍数にはなれない。(唯一の3の倍数の素数は3の為)。
従ってb=3m+1,b=3m+2(mを自然数とする)の2通りについて考えます。
b=3m+1の時、c=b-10に代入すると
\(\begin{aligned}b-10=3m+1-10\\
⇔ b-10=3m-9\\
⇔ b-10=3\left( m-3\right) \end{aligned}\)
より、m=4の時、b-10=3、b=13
これをa=b+10に代入してみると(a,b,c)=(23,13,2)となり、これまでの条件を全て満たします。
よってこれが答えの一つです。
次に、b=3m+2の時、a=b+10に代入すると
\(\begin{aligned}b+10=3m+2+10\\
⇔ b+10=3m+12\\
⇔ b+10=3\left( m+4\right) \end{aligned}\)
mは自然数なので、a=b+10=3( m+4)となり、m=1の時a=15,,,,とこの場合は条件を満たしません。
次にcが奇数の時を考えます。
b-c-8が素数である事に注目すると、a>b>c、かつ、b>c+8より、bは奇素数であるから、b-c-8は奇ー奇ー偶(8)となり、偶数。
b-c-8は素数かつ偶数!なので、b-c-8=2
またしても2が登場しました。
ゆえに、c=b-10,a=b+10。この場合でも、bの「余りで場合分け」が役に立ちそうです。
b=3m+1(mは自然数)の時、c=b-10=3m-9
⇔ c=b-10=3(m-3)
よりm=4,の時c=3
更に、b-10=3より、b=13
a=b+10=23
ゆえに(a,b,c)=(23,13,3)これは条件を満たす。
次にb=3m+2(mは自然数)の時、
a=b+10=3m+12⇔ 3(m+4)
mは自然数であるので、m=1の時でも
a=b+10=3(1+4)となり、条件を満たさない。
以上より、a-b-cと、b-c-8が素数となる条件を満たす素数(a,b,c)の組みは、
(a,b,c)=(23,13,2),(23,13,3)
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整数問題を閃き・センス不要で解く!解法まとめ
・整数問題は文系難関校/理系問わず、超頻出分野なので類題を数多く解く。
・以下のリンクで、今回の素数の問題のように難しい『整数問題』で必要と思われがちな”センス”や”閃きなし”で問題を解いていく『道具』と、その使い方の『手順』を解説した記事をまとめています!