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執筆者・編集者プロフィール
安田周平
個別指導塾YES/YESオンラインスクール塾長・船場物産株式会社代表取締役社長。
理数・情報系記事とデータサイエンスの為の基本レベルの線形代数等の解説記事を執筆しています。

倍数と確率(頻出問題)

今回は、箱に入っている数字の書かれたカードを複数枚取り出して、

その数の積が◯の倍数になる確率を求める、整数分野と確率分野の融合問題を解説していきます。

その過程で、余事象とド・モルガンの法則の考え方や実践的な使い方を紹介します。

ド・モルガンの法則と余事象を上手く使う

<問題>

箱の中に1から9までの数字がそれぞれ書かれたカードが計9枚入っている。今この箱からカードを同時に4枚取り出す。この時取り出したカードに書かれた数字の積が小問(1)、(2)、(3)のようになる確率を求めよ。

(1)4枚の積が5の倍数になる確率

(2)4枚の積が10の倍数になる確率

(3)4枚の積が6の倍数になる確率

 

一度自分で考えてみてください。(15分程度)

全然分からない場合は↓解答解説へ。

(整数分野と場合の数と確率分野の復習は以下よりご覧下さい)

<これまでの整数分野の解法解説>

<場合の数と確率分野の解法解説>

(1)はやや易、(2)は普通、(3)がやや難 位のレベルです。

・・・・・・

・・・・・・

では解説に入っていきます。

解答解説

(1)4枚の積が5の倍数になる確率

まず全事象を求めます。

「1、2、3、4、5、6、7、8、9」から4枚取り出す。

9C4=(9×8×7×6)/(4×3× 2×1)=126

そして、積が5の倍数という事は、”必ず一枚は「5」のカードが4枚中にある”必要があるので、

逆に言えば、全事象の確率(=1)から、5が含まれない確率(=余事象の確率)を引けば問われている確率になります。

よって、余事象の確率は以下のように計算出来ます。

5以外の8枚から4枚を取り出す場合の数/9枚から4枚取り出す場合の数

$$\frac {( {}_8 C_4) }{( {}_9 C_4) }$$

後は全事象の確率から余事象の確率を引けば良いので、

$$1-\frac {( {}_8 C_4) }{( {}_9 C_4) }=\frac {56}{126}=\frac {4}{9}$$

10の倍数という事は・・・

(2)4枚の積が10の倍数になる確率

この問題は若干難易度が上がります。

10の倍数になるという事は、5のカードが必ず一枚出て、

かつ、2の倍数のカードが少なくとも一枚出る必要があります。

「少なくとも」と言うワードがあればほぼ100%余事象を使う事を考えます。

取り敢えず、「5」のカードが出ることは必須なので、

残りの3枚の中に少なくとも一枚は2の倍数のカードが出る場合の数を求めます。

先に5のカードを取り出しているものとして考えると、

残りの8枚から3枚取り出して、それが少なくとも一枚は2の倍数。

後半部分の余事象は、残りの8枚から3枚取り出して8C3

$$全て2の倍数以外(1,3,7,9)が出る{}_4 C_3$$、事象だから、全事象から余事象を引くと

$${}_8 C_3 - {}_4 C_3=\frac {8×7× 6}{3×2×1}-\frac {4×3×2}{3×2×1}$$

=56-4=52(通り)。ここで、最初の5が出る事は確定しているので、

$$\frac {1×52}{\left( {}_9 C_4\right) }=\frac {1×52}{126}=\frac {26}{63}$$

6の倍数は更に少しレベルが上がります

(3)4枚の積が6の倍数になる確率

この問題は少しややこしいです。

何故なら、「6」の倍数になるには「2」の倍数のカードと「3」の倍数のカードがそれぞれ少なくとも1枚はあるor「6」のカードが一枚入っている必要があります。

2の倍数のカード:2、4、6、8

3の倍数のカード:3、6、9

この様な時は、これまでの様に上手く余事象を利用出来ません。

こんな時に役立つのが、ド・モルガンの法則と集合の考え方です。

ドモルガンの法則と集合の考え

$$( \overline {A\cap B}) =\overline {A}\cup \overline {B}$$

$$( \overline {A\cup B}) =\overline {A}\cap \overline {B}$$

$$A\cup B=A+B-( A\cap B)$$

文字の上のバーは「否定」、∩は「かつ」、∪は「または」を表します。

ド・モルガンの法則とは、上のバーそれぞれに分配でき、

例えば「(A、かつ、B、)の否定」は「Aでないもの、または、Bでないもの」と同じである事を示しています。

3式目の、$$A\cup B=A+B-( A\cap B)$$は、ベン図を描くとすぐ理解出来るので、一度自分で描いてみてください。

Aの事象またはBの事象が起こる=Aの事象+Bの事象、

としてしまうとAかつBが起こる事象を二回計算してしまいます。

そこで、A事象+B事象からー(AかつBの事象)のように、

1回分だけ引いてあげる事でダブルカウントを防ぐ事ができます。

さて問題に戻ります。

今回の命題は、Xが6の倍数=”2の倍数と3の倍数が4枚の中に含まれていること”なので、

・2の倍数が含まれている確率を、P2として、

・3の倍数が含まれている確率をP3と置くと

$$P_{2}\cap P_{3}=1-\overline {P_{2}\cap P_{3}}$$

$$\overline {P_{2}\cap P_{3}}=\overline {P_{2}}\cup \overline {P_{3}}$$

$$\overline {P_{2}}\cup \overline {P_{3}}=\overline {P_{2}}+\overline {P_{3}}-(P_{\overline {2}}\cap P_{\overline {3}} )$$

$$\overline {P_{2}}=\frac {{}_5 C_4}{{}_9 C_4}$$

$$\overline {P_{3}}=\frac {{}_6 C_4}{{}_9 C_4}$$

ここで、2の倍数でなく、3の倍数でもないカードは1,5,7の3枚です。

3枚しかないものから4枚を選び出すことは出来ないので、この確率はゼロになります。

$$P_{\overline {2}}\cap P_{\overline {3}}=0$$

従って、ここまでの計算を合わせると、

$$\begin{aligned}P_{2}\cap P_{3}=1-\overline {P_{2}\cap P_{3}}\\
=1-\left( \overline {P_{2}}+\overline {p_{3}}-P_{\overline {2}}\cap P_{\overline {3}}\right) \end{aligned}$$

$$=1-\left( \frac {{}_5 C_4}{{}_9 C_4}+\frac {{}_6 C_4}{{}_9 C_4}-0\right) $$

$$\begin{aligned⇔ 1-( \frac {5}{126}+\frac {15}{126}-0) \\
⇔ \frac {106}{126}=\frac {53}{63}\end{aligned}$$

$$よって答えは\frac {53}{63}になります。$$

 

まとめ

集合の分野は特に苦手な人が多いですが、この記事で紹介した様に確率や整数との融合問題などを解く際に避けて通れない分野です。

この様な範囲を好んで出す大学や学部を目指す人は、「論理と集合」分野を長い休みの時などに集中して復習しなおしましょう。

 

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