速度ベクトル・加速度ベクトル・道のり(数学III積分法の応用+α)
<この記事の内容>:積分の応用の範囲の最後に学ぶ、「速度/加速度ベクトル、道のり」に付いて基本から応用問題の解き方まで整理しています。
<関連記事>:「数学Ⅲの微分・積分法の解説記事一覧」/「(曲線の長さ=)弧長の求め方2タイプを分かりやすく」
目次(タップした所へ飛びます)
速度/加速度ベクトルと道のり
ここからは、色々な関数のグラフ上で移動する点の速度や速さ、加速度をベクトルであらわす考え方・問題を見ていきます。
座標の成分表示からスタート!
以下のパラメータ表示された関数の速度・速さ・加速度・道のりを求めていきます。
\(\begin{cases}x=3\cos t-\cos 3t\\
y=3\sin t-\sin 3t\end{cases}\)
速度ベクトルと速さの重要な違い
\(\vec {v}=\begin{pmatrix}
v_{x} \\
v_{y}
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
\frac {dx}{dt} \\
\frac {dy}{dt}
\end{pmatrix}\)
上の様に、速度はベクトルです。座標の成分表示をそれぞれtで微分すると、
\(\vec {v}=\begin{pmatrix}
v_{x} \\
v_{y}
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
-3\sin t+3\sin 3t \\
3\cos t-3\cos 3t
\end{pmatrix}\)
となって速度ベクトルの成分が求まります。
一方で、「速さ」はベクトル量ではなく、スカラー量で次のようにして求めます。
\(|\vec{v}|=\sqrt{v_{x}^{2}+ v_{y}^{2}}=\sqrt{(\frac{dx}{dt})^{2}+(\frac{dy}{dt})^{2}}\)
加速度ベクトル
位置→(微分)→速度→(微分)→加速度
なので、
\(\vec {a}=\begin{pmatrix}
a_{x} \\
a_{y}
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
\frac {d^{2}x}{dt^{2}} \\
\frac {d^{2}y}{dt^{2}}
\end{pmatrix}\)
よって、先ほど求めた速度ベクトルをもう一度微分して
\(\vec {a}=\begin{pmatrix}
a_{x} \\
a_{y}
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
(-3\sin t+3\sin 3t) \\
(3\cos t-3\cos 3t)
\end{pmatrix}\)
弧長と道のりの関係
道のりは、【速さ】掛ける【時間】で求めます。
ただし、速度ベクトルの成分を見ればわかりますが、(ふつう速さは一定でないので)積分をして求めることになります。
$$\int_{t_{1}}^{t_{2}}|\vec{v}|dt$$
$$|\vec{v}|=\sqrt{(\frac{dx}{dt})^{2}+(\frac{dy}{dt})^{2}}$$
なので、
$$\int_{t1}^{t2}\sqrt{(\frac{dx}{dt})^{2}+(\frac{dy}{dt})^{2}}dt$$
これは「弧長の求め方(”パラメータ表示”version)」の時と同じ式です。
放物線上の動点座標を求める:演習問題
ここから先は、これまでの知識を踏まえながら少し切り口を変えた”応用〜発展レベル”の問題を見ていきます。
問題:動点Pの運動と任意の時間tでの座標x
\(y=2x^{2}+2\)のグラフ上で移動する点Pが時刻t=0の時、速さ\(\frac{1}{x}\)で(0,2)をx軸正方向へ動き出した。このときの点Pのx座標をtの関数で表せ。
解答・解説(変数分離形の微分方程式)
stepⅠ:dy/dtを以下の様にしてdx/dtで表します。
$$\frac{dy}{dt}=\frac{dx}{dt}\frac{dy}{dx}=4x\frac{dx}{dt}$$
stepⅡ:\(|\vec{v}|\)と問題文の【速さ】をイコールで結ぶ。
$$|\vec{v}|=\sqrt{(\frac{dx}{dt})^{2}+(4x\cdot\frac{dx}{dt})^{2}}=\sqrt{(1+16x^{2})(\frac{dx}{dt})^{2}}$$
この速さが1/xと等しいので
$$\frac{1}{x}=\sqrt{1+16x^{2}}(\frac{dx}{dt})$$
(※:「変数分離型の微分方程式」です。xとtをそれぞれ片方だけに集めて、積分することで解きます)
\(\int 1 dt=\int x\sqrt{1+16x ^{2}}dx\)
左辺はt、右辺をxでそれぞれ積分すると
$$t=\frac{(1+16x^{2})^{\frac{3}{2}}}{48}+Const.$$
積分定数(Const.)が未知なのでこれを先に求める必要があります。
初期条件の代入
ここで、最初の条件(初期条件)t=0のときx=0を代入すると、Const.=-1/48
結果、$$x=\frac{(48t+1)^{\frac{2}{3}}-1}{4}$$
となって、x座標を時間tの式で表すことが出来ました。
速度/加速度まとめ(数学III+物理)
・速度や道のりの問題自体は超頻出という事はありませんが、考え方などは微積分のさまざまな知識を利用します。
・途中の変形(変数分離)は発展的な内容ですが、知っておかないと解けない場合があるのでぜひ覚えておいてください。
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