三角関数の公式を丸暗記していませんか?
タイトルで??となった人も多いのではないでしょうか。多くの人が”語呂合わせ”などの色々な工夫をして、三角関数の(それも沢山の)公式を覚えようとします。
この記事はそんな『公式を覚えるのに苦労している』人に向けて書いています。
実際のところ、最もはやく、正確に公式を覚える方法は、「一回一回加法定理から導き出す事」なのです。
めんどくさそうに思うかもしれませんが、導出を繰り返しているうちに『勝手に覚えてしまう』ので、重要な試験などの時までには自然と使いこなせるようになっています。
さらに、もし『ど忘れ』してしまっても『導き方』さえ知っていれば、その場で再び公式を作り出す事ができるのです。
ぜひこの記事を最後まで読んでみてください。そして何度か手を動かしてみれば『丸暗記』の必要がない状態になっているはずです。目次(タップした所へ飛びます)
二倍角/三倍角/半角の公式と三角関数で一番大切な定理
一番大切な公式:加法定理の証明の確認
加法定理以外は『導き方を身につける』事”のみ”すれば良いので、その大元である【加法定理の作り方(証明)】は必ずご覧下さい↓
そして、この『加法定理』だけは覚えるようにしましょう。(その理由も含めて、上の記事にまとめました)
加法定理の覚え方
ただし、(±)は複号同順で、”さいた(咲いた)=sin”、 ”こすもす(秋桜)=cos” です。
$$\sin( α \pmβ) =\sinα\cosβ \pm \cos α \sinβ $$
「さいた・こすもす±こすもす・さいた」と覚えて下さい。
$$\cos( α \pm β) =\cosα \cosβ \mp \sin α \sinβ $$
【こすもす・こすもす∓さいた・さいた】と覚えてください。ただし、±が∓に逆転している事に注意!
$$\tan(α\pmβ) =\frac {\tanα \pm \tanβ }{1\mp \tan \alpha \tan \beta }$$
(参考)タンぷら(+)タンの(わる)1まい (-)タンタン。
tanの語呂は自分の覚えやすいものを使うと良いでしょう。
ここまでで加法定理は終わりです。
繰り返しになりますが、符号と語呂に注意してこれらだけは暗記しておいて下さい。
加法定理から二倍角の公式を導く
出来れば紙でもノートでもなんでも良いので(綺麗に書く必要はありません!)、”流れを覚える”まで何度も書き写してみて下さい。
二倍角の公式の導出
二倍角は、加法定理の(α+β)の部分のうち、右側の『βをαにすれば』簡単に導くことができます。
sin(正弦)の二倍角の公式
まずはサインの二倍角を導いてみます。
$$\begin{aligned}\sin ( 2α) =\sin (α+α) \\
=\sinα \cosα +\cosα \sinα \\
=2\sin α \cosα \end{aligned}$$
よって、サインの2倍角の公式は、sin2α=2sinα cosα
確かに公式通りになった事が確認できました。
cos(余弦)の二倍角の公式
注意!次はcos(余弦)ですが、sinの時と違って『二倍角の公式が3種類』も存在します。
そこで、まずcos(α+α)を計算し、三つのうちの1つを導いた上で→残りは”三角比(関数)の相互関係”を使って導出する、と言う流れになります。
\(\cos(2\alpha)=\cos(\alpha+\alpha)=\cos\alpha\cos\alpha-\sin\alpha\sin\alpha\)より、
\(=\cos^{2}\alpha-\sin^{2}\alpha\)
ここで、三角比(数1)で学んだ『三角比の相互関係』より、\(\sin^{2}\theta+\cos^{2}\theta=1\)を用いる事で、\(\sin^{2}\theta=1-\cos^{2}\theta\)より、代入して\(=2\cos^{2}\alpha-1\)
また、\(\cos^{2}\theta=1-\sin^{2}\theta\)を代入すると、cosの二倍角の定理の3番目である\(1-2\sin^{2}\alpha\)を得ることができます。
半角の公式は"cos"の二倍角から導く
半角公式は、sin・cos・tanのいずれの場合もcosの二倍角(の内の:\(=2\cos^{2}\alpha-1\)と\(1-2\sin^{2}\alpha\))から導き出します。
cos2α=2 cos2(α)-1
ここで2α=Aとおくと、、、
コサインの半角公式
\(\begin{aligned}\cos2\alpha =2\cos ^{2}\alpha -1\\
2\alpha =A\\
\cos^{2}\frac {A}{2}=\frac {1+\cos A}{2}\end{aligned}\)
よって、半角の公式は:\(\cos^{2}\frac{A}{2}=\frac{1+\cos A}{2}\)
サインの半角公式
こちらもコサインの二倍角から導きます。
\(\cos 2\alpha=1-2\sin^{2}\alpha\)より、
\(2\alpha=Aとおいて、\cos A=1-2\sin^{2}\frac{A}{2}\)
よって、\(\sin^{2}\frac{A}{2}=\frac{1-\cos A}{2}\)
<三倍角の公式と半角の公式>
※ちなみに、tanの半角も相互関係を使って、$$\tan の半角公式=\frac {\sin の半角}{\cos の半角}$$で導けるので、特に流れを覚えておく必要はありません。
半角公式のもう一つの導き方(重要!)
数学に限りませんが、色々な解法や導き方を検討し、学ぶことによってその分野の力を大きく伸ばしてくれます。
【半角の公式】についても、王道は『加法定理→二倍角→半角』ですが、もう一つ興味深い導出法を紹介しておきます。
\(1=\sin^{2}\theta +\cos^{2}\theta \)・・・(*)と
\(\cos 2\theta=\cos^{2}\theta-\sin^{2}\)・・・(**)
の二つの式を見ると、\(1と\cos 2\theta \)が共役な関係にあることが分かります。(『共役複素数』などで登場する『共役』の事です。)
これより、\((*)+(**)=1+\cos 2\theta=2\cos^{2}\theta\)
変形すると、$$\cos^{2}\frac{A}{2}=\frac{1+\cos A}{2}$$
さらに、sinの半角は、(*)ー(**)から同様にして作り出すことが出来ます。
(こちらは自分でやってみてください!)
3倍角も加法定理から・・・
次は3倍角です。
これも加法定理より、(α +β)のβを2αにおきかえて、、
\(\begin{aligned}\sin ( 3α ) =\sin(α+2α) \\
=\sin α \cos(2α) +\cosα \sin (2α) \\
=\sin α(1-2\sin ^{2}α ) +2\sinα( 1-\sin ^{2}α ) \\
=3\sin \alpha -4\sin^{3}\alpha \end{aligned}\)
(※注意:2行目右側から3行目右側の\(\cosα\sin2α→2\sin\alpha(1-\sin^{2}\alpha)\)は、いくつかの作業を同時に行なっています。
一つ目は:\(\sin 2\alpha=2\sin\alpha \cos\alpha という二倍角の使用\)。
二つ目:さらに二倍角で出てきた\(\cos \alpha \)と元からあった\(\cos \alpha を掛けて\cos^{2}\alpha\) 。ここまでで、\(2\sin\alpha\cdot \cos^{2}\alpha \)。
三つ目:相互関係\(1=\sin^{2}\theta +\cos^{2}\theta\)を利用して \(\cos^{2}\alphaをサインだけの式\)に変形しています。)
よって、サインの三倍角は sin3α=3sinα–4sin3(α)と導けます。
cosの場合も同様に、(α+β)のβを2αに置き換えると、導くことができます。
三倍角の公式の特徴(覚え方のコツ)
※ちなみに、
・【sinの3倍角に登場するのはsinのみ】、
・【cosの3倍角も公式に現れるのはcosのみ】、
・【tanの3倍角も同様にtanのみ】です。
つまり、『3倍角の公式は(左辺の三角関数の種類)=(右辺の関数の種類)だけで表せること』を頭の片隅に置いておくと良いかも知れません。
まとめと三角関数の公式シリーズ
必ず今日の内容を自分で手を動かして再現しておいてください。
繰り返しになりますが、公式は何度か導いていると”結果的に自然と覚えている状態”になります。
無理してはじめから覚えるよりも、こちらの方がすっと頭に入って来ますし、忘れても最悪「加法定理」だけ覚えていれば何とかなります。
(それでも忘れた時のために、導出の練習はしておいて下さい【再掲:「加法定理の証明と導出」】)
この他の『積和・和積の公式』や「還元公式」、「三角関数の合成」を同様に『覚えず導く』方法をまとめたページを作成しました。
>>「三角関数の公式の証明と覚えず導く方法総まとめページ」<<ぜひ続けてご覧ください!
和積・合成・還元公式などの解説へ
今回は、倍角・半角公式を扱いました。残りは以下の記事で『導き方』の流れを紹介しています。
還元公式とは、”余角・負角・補角”の各公式の総称です。
例えば、sin(60°-θ)=?や、cos(π/2+θ )=?と言った角度(弧度)の部分を変換する際に用います。
<複素数平面(数Ⅲ)を学んでいる方向けに記事を追加>
三角関数と複素数平面は非常に相性が良く、理系・医系の人は”n倍角の作り方”を合わせて学習する事→
をオススメします!
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