数学的帰納法の基礎と証明の仕方
この記事を読んでいるあなたは「数学的帰納法」のことは知っていても、
・実際に帰納法を使って証明することが苦手だったり、どうやってk+1番目を導けば良いのか悩んでいるのではないでしょうか?
この記事では、数学的帰納法の意味を振り返りつつ、実際に数列の和の公式を題材にして、上手く証明するコツを解説しています。
ぜひじっくりと読んでみて下さい。
目次(タップした所へ飛びます)
数学的帰納法とは?
何をしているか良くわからない人が多い「帰納法」ですが、実は身近で使われていることも多く、無意識のうちにあなたも利用しているのです。
普段の生活から証明の型を覚えることによって、試験でも簡単に解けるのが“数学的帰納法”ですので、しっかりとその基礎を固めましょう。
それでは解説していきます。
帰納法を考えたのは、“ブレーズ・パスカル”だと言われています。
とても有名な方なので、難しい理論だと想像する人も多いかもしれません。しかし、実際はとても簡単です。
(数学的)帰納法とは証明の方法の1種で、仮定から結論を導く方法です。
実生活で例えると、「今日まで見たカラスは全部黒色だった」だから「全てのカラスは黒い」という結論の出し方です。
とても簡単ですね。
ただし、数学的帰納法と帰納法は若干の違いがあるため、
ここからは【数学的帰納法】を利用した、証明の手順を紹介します。
数学的帰納法での証明の手順とコツ
手順は以下の通りです↓
(命題とは、これから証明するものの事です)
(1)n=1の時、命題が成立することを証明する
(2)n=kの時、命題が成立すると仮定すると、n=k+1の時も命題が成立することを示す。
この2段階の手順を踏むことによって、
・n=1の時成立、
・n=k+1のkに1を代入するとn=1+1=2の時も成立、
・n=k+1のkに2を代入するとn=2+1=3の時も成立・・・と
次々に「全ての正の整数(自然数)で成立」することを示す事ができます。
この様子はよく「ドミノ倒し」に例えられるので、知っている人も多いのではないでしょうか?
これが数学的帰納法の基本的な手順・考え方です。
ただし、このままではわかりにくいかと思うので、実際に例題を解きながら理解していきましょう。
有名なシグマ(数列の和)の公式を証明してみる
問)
$$1^{2}+ 2^{2}+ 3^{2}+…… + n^{2} =\frac{n(n+1)(2n+1)}{6}$$
を数学的帰納法を使って証明せよ
これは、$$\sum ^{n}_{k=1}k^{2}$$の有名な公式です。
(数列の和の公式については→「数列の和とシグマ公式の解説」)
解法)先ほど解説した手順にそって問題を解いていきます。
(ⅰ)n=1の時、命題が成り立つことを証明する
n=1 のとき
\((左辺)= 1^{2}= 1、(右辺)=1×2×\frac{3}{6 }= 1\)
より成り立つ。
(ⅱ)n=kの時に命題が成立すると仮定すると、n=k+1の時も命題が成立する事を示す
n=k のとき
$$1^{2 }+ 2^{2 }+ 3^{2 }+ …… + k^{2}=\frac{k(k+1)(2k+1)}{6}$$
が成り立つと仮定する。
↑これは数学的帰納法を使用するときに必ず書きます。
n=k+1 のときを考えると、
\((左辺)= 1^{2}+2^{2}+3^{2}+ …… + k^{2}+(k+1)^{2}\)
ここで、数学的帰納法が得意になる、最大のコツを紹介しておきます。
コツ:目標のn=k+1の式を書いておく!
$$この左辺の式を\frac{(k+1) ((k+1)+1)(2(k+1)+ 1)}{6}$$
に持っていくように計算する。
理由は、仮定した式の右辺がn=k+1を代入した形になれば、
左辺と右辺が等しいことを証明できるからです。
数学的帰納法を使っていると、《最終的にどの様な式に変形すれば良いのか分からなくなる》事があるので、
目標とする式を先に書いておくと見通しが良くなり、迷いが減ります!
\((左辺)=1^{2}+2^{2}+3^{2}+ …… + k^{2}+ (k+1)^{2}\)
$$=\frac{k(k+1)(2k+1)}{6}+(k+1)^{2}$$
$$=\frac{(k+1)(2k^{2}+k+6k+6)}{6}$$
ここでさらにポイント!
\(おそらく(k+1)^{2}が \frac{(k+1)}{6}で\)
くくられた途端、6k+6になったのがわからない人がいるかと思います。
ですから途中式をさらに解説します。(理解出来ている人は飛ばして下さい)
①まずは(k+1)/6を分解するとk+1と1/6にすることができる。
\(②そして(k+1)^{2}\)をk+1だけで
くくると(k+1)(k+1)となる
③これを残りの1/6でくくると$$\frac{(k+1)(6k+6)}{6}$$になります。
逆算してみれば同じになりますね。
わかりにくいという人は実際に手を動かして挑戦しましょう。
本題に戻ります。
$$(左辺)= 1^{2}+ 2^{2}+ 3^{2}+ …… + k^{2}+ (k+1)^{2}$$
$$=\frac{k(k+1)(2k+1)}{6}+(k+1)^{2}$$
$$=\frac{(k+1)(2k^{2}+k+6k+6)}{6}$$
$$=\frac{(k+1)(2k^{2}+7k+6)}{6}$$
$$=\frac{(k+1)(k+2)(2k+3)}{6}←上の式を因数分解しただけです!$$
$$=\frac{(k+1)((k+1)+1)(2(k+1)+1)}{6}$$
※の目標とする式になりました!
よって、n=k +1 のとき成立。以上より、全ての自然数nについて命題が成り立つ。
いかがでしたか?上にも書きましたが、
【n=k+1の目標の式を先に書き、いかに上手く式変形していけるか】になります。
この【コツ】を身に付けるには、さまざまな類題を解いてみることが最短です。
よって、この手順をもう一度復習した上でもう一題、例題に取り組んでみましょう。
数学的帰納法&整数分野の証明問題
この問題は一度自分で上の例題を見ながら解いてみましょう。
難易度は先ほどの問題に比べ優しくなっていますが、変数指定を追加でする必要があります。
数学的帰納法は“整数分野”と相性が良く、数列だけでなく整数問題と融合して出題される事が多いです。
第二問は、その中でも「倍数」に関する問題です。
<参考:「【センス不要】整数分野を得点源にする為の解説記事10選」>
(例題2)
\(4^{n}–1\)(n=1,2,3,……)が3の倍数であることを数学的帰納法で示せ
(解答解説2)
\(T(n)= 4^{n}–1とおく\)←見やすくするためにおいているだけです。
(ⅰ)n=1の時、命題が成立することを証明する
n = 1 のとき
T(1)= 4–1=3は3の倍数。
(ⅱ)n=kの時、命題が成立すると仮定すると、n=k+1の時も命題が成立することを示す
n = k のとき
\(T(k)= 4^{k}– 1\)が3の倍数であると仮定する
おなじみの「決まり文句」です。
つまり\(4^{k}– 1 = 3m (m=1,2,3\cdots)と\)
おくことができる←ポイントの変数指定
n=k+1のとき、T(n)のnにk+1を代入すると、
\(T(k+1)=4^{k+1}-1=4×4^{k} – 1\)仮定の式より、\(4^{k}– 1 = 3m⇔4^{k} = 3m + 1\)を代入して
\(T(k+1)= 4(3m+1)–1=12m+3\)
この式は3でくくることが出来ます!
=3(4m+1)
よって T(k+1)も3の倍数になる。
以上よりn=k+1でも成立するので、数学的帰納法より、全ての自然数nについて命題が成り立つ。
いかがでしょうか、①よりも式変形が複雑ではないので解けた方も多いと思います。
しかし、ポイントの\(4^{k}–1=3m\)とおく
ことができなければ難しいかもしれません。
式変形、変数指定の2つがセットとして問題が出ることも良くあるので注意しましょう。
まとめと次回:数学的帰納法と漸化式へ
“数学的帰納法”という名前だけで苦手意識を持ってしまう方も多い分野ですが、
・決まった手順
・<目標とする式を先に書いておくと言う“コツ”>さえ覚えてしまえば問題なく解いていけると思います。
それでも苦手と感じる方へ
この場合は、数列の和の計算などの【基礎分野】が定着していない可能性があります。
関連記事【数列の漸化式の解き方や数列の和の記事まとめ】を利用して、まずは数列をしっかりと固めてみて下さい。
そして数列の基礎を身に付けてから、再びこの記事を読むと、かなり楽に理解できるようになっているはずです!
一般項を予測する漸化式の解き方へ
次回は漸化式シリーズ第12回として、この数学的帰納法を使い、
【漸化式から一般項を予測して→数学的帰納法で証明】、というパターンを解説していきます。
→「一般項を予測して数学的帰納法で証明する型の漸化式の解き方」←
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