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線形(ベクトル)空間とは?

<この記事の内容>:「元」や「線形空間の定義」など、一見理解しにくい「線形空間」とそれぞれの言葉の意味を“集合”の範囲を振り返りながら解説していきます。後半では、線形空間における『線形従属』と『線形独立』の判別の仕方を詳細に説明しました。

<予備知識>

・「線形代数をはじめから分かりやすく!解説記事まとめ

・集合については「集合と写像(要素から全単射の意味まで)

・ベクトル(高校範囲)の復習は「数B:ベクトルの解法・解説記事まとめ

線形(ベクトル)空間の意味・定義と集合

線形空間の最も基本的なイメージは、ベクトルの集合が以下に示す8つの定義を満たしていることです。

元・R・Vとは何か?(用語解説)

線形空間の定義では、いろいろな言葉が登場するので初めに整理しておきます。

まず”元”という言葉は集合における”要素”のことです。

また、Rnをn次元ベクトルの集合、Rnのうち任意の2つの元が以下の条件を全て満たすとき、Rn=Vとし、Vの事を“線形空間”と言います。

ベクトル(線形)空間の和と積による8つの条件

上述した、Rnの”任意”の元(=ベクトル)2つ(ここではベクトルuとベクトルvとします)が満たす必要がある『8つの条件』を和と積に分けて紹介していきます。

元とスカラー倍に関する条件1〜4

以下のk,lを実数として、

1:分配法則

\(k(\vec {u}+\vec{v})=k\vec{u}+k\vec{v}\)

2:交換法則

\(1・ \vec {u}=\vec {u}\)

3:\((k+l)\vec {u}=k\vec {u}+l\vec{u}\)

4:\((kl)\vec {u}=k(l\vec {u})\)

これらの4つはスカラー倍に関する条件です。次は「和」の条件を見ていきます。

元の和に関する条件5〜8

5:結合法則

\(\vec {u}+\vec{v}=\vec {v}+\vec{u}\)

6:零元(0ベクトルの事です)の存在

\(\vec {u}+0=0+\vec {u}\)

7:逆元(逆ベクトル)の存在

\(\vec {u}+\vec{x}=\vec {x}+\vec{u}=0\)

\(\vec{x}=-\vec {u}\)

8:

\((\vec {u}+\vec{v}+)\vec{w}=\vec {u}+(\vec{v}+\vec{w})\)

1〜8を任意の元\(\vec{u},\vec{v}\)が満たすとき、その集合を「ベクトル(線形)空間」と定義します。

ところで、線形(ベクトル)空間という名前がついていますが、上の8つを全て満たしていれば『ベクトル』でなくとも『ベクトル』空間になるものがあります。

原点を通る直線や行列などこれまでの「ベクトル」のイメージとは異なるものも、線形空間となり広がっていきます。(詳しくは別記事にて)

線形独立と従属の定義

ここでは線形空間における“線形独立と線形従属”について解説します。

高校の数学で“ベクトルの一次独立”を習った人も多いと思います。(→「ベクトルの一次独立とは?数学B」)

今回はその線形(一次)独立・従属を大学数学のレベルに発展させて学び直します。

n次元の線形(ベクトル)空間\(V=R^{n}\)において、n個のn次元ベクトル:$$u_{1},\ldots u_{n}とスカラー量:k_{1},\ldots,k_{n}が、$$

\(k_{1}u_{1}+k_{2}u_{2}+\ldots+k_{n}u_{n}\)

の状態であるとき、これを『線型結合(関係式)』と呼び(そのままですね)この線型結合が以下の条件を満たすとき、それぞれ線形独立・線形従属であるといいます。

線形独立の定義

線型独立の定義は、\(k_{1}u_{1}+k_{2}u_{2}+\ldots+k_{n}u_{n}=0\)すなわち、線形結合で表された式が零ベクトルの時、\(k_{1},k_{2}\ldots ,k_{n}が全て"0\)=係数が全て0である場合です。

線形従属の定義

線形従属の定義は、\(k_{1}u_{1}+k_{2}u_{2}+\ldots+k_{n}u_{n}=0\)

の時、少なくとも一つの係数が0でない場合です。

これだけではいまいちよくわからないので、実際にベクトルを使って具体的に見てみます。

線形従属/独立の判定の仕方と行列のランク

さて、ここでははあるベクトルが複数与えられて、それらが線形従属・線型独立であるかを判断する方法を紹介していきます。

(行列のランク・自由度については→「階段行列とrank・自由度の解説」を参照してください。)

3次元ベクトルを例として、線形従属なのか、線形独立なのかを調べてみましょう。

\(\vec{a}=\begin{bmatrix}
2 \\
1 \\
3
\end{bmatrix},\vec{b}=\begin{bmatrix}
1 \\
2 \\
1
\end{bmatrix},\vec{c}=\begin{bmatrix}
4 \\
3 \\
4
\end{bmatrix}\)

のとき、この2つのベクトルa,b,cが線形独立なのか、従属なのかを調べます。

(ここからは、階段行列を作り、ランクを調べることで線形独立であることを示す方法を紹介します。以下の方法を身につければ、図を描いたり・イメージできない4次元以上のベクトル空間でも同様の方法で判断できるようになります。)

定義式よりベクトルと係数を行列のかけ算の形で表し=0とする

まずは、与えられた3つの3次元ベクトルを線形従属・独立の定義の式:\(k_{1}u_{1}+k_{2}u_{2}+\ldots+k_{n}u_{n}=0\)のカタチになるように変形します。

\((\vec{a} \vec{b} \vec{c})・\begin{pmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{pmatrix}=0\)

行列のランクを調べる為に階段行列の形に変形する

次に、列ベクトルa~cを並べた部分を正方行列(Bとします)にし、その行列のランクを調べる為に行基本操作を行います。

\(B=\begin{pmatrix}
1 & 2 & 4 \\
2 & 1 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{pmatrix}\)

まず、2行目ー1行目×2と、3行目ー1行目を行い、

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 4 \\
0 & -3 & 3 \\
0 & 1 & -2
\end{pmatrix}\)

次に、2行目と3行目を入れ替えて、

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 4 \\
0 & 1 & -2 \\
0 & -3 & 3
\end{pmatrix}\)

2行目×3+3行目を行うと、(ランクを調べるのが目的なので、1行目については操作しません。)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 4 \\
0 & 1 & -2 \\
0 & 0 & -3
\end{pmatrix}・・・(※)\)

の形の行列ができます。

階数(rank)と正方行列の次数を比べる

(※)より、ランクは3であることがわかりました。3次の正方行列で、rank3なのでこの行列は正則で逆行列を持ちます。

逆行列を持つならば「連立方程式を行列を使って解く仕組みを解説!」の手順で係数の列ベクトルの解を調べることができます。

すなわち、列ベクトルを並べた行列Bに逆行列B-1をかけることによって、

\(B・\begin{bmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{bmatrix}=0\)

をとき、係数であるk1,k2,k3の値を調べます。

\(B^{-1}B\begin{bmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{bmatrix}=B^{-1}・0\)

より、\(\begin{bmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}
0 \\
0 \\
0
\end{bmatrix}\)

の解のみを持ちます。(これを自明な解という)したがって、係数が全て0なので定義より、この3つの3次元ベクトルは線型独立であることがわかりました。

定着用の練習問題

ある程度の流れは掴めてきたでしょうか?n次元ベクトルをn個与えられて従属or独立の判別をするときは、

(1):列ベクトルを並べた行列・係数の列ベクトル=0 と置き、

(2):行列を行基本操作で階段行列を作りランクを調べ

(3):n次の"n"とrankの値が等しければ係数は0であり線型独立。

この定着用問題では、(3)のn次とrankの値が等しくない場合を扱います。

<問2>

今、3次元ベクトル「u,v,w」がある。この3つのベクトルは線型独立か線形従属か?

\(\vec{u}=\begin{bmatrix}
1 \\
3 \\
5
\end{bmatrix},\vec{v}=\begin{bmatrix}
3 \\
1 \\
2
\end{bmatrix},\vec{w}=\begin{bmatrix}
-2 \\
2 \\
3
\end{bmatrix}\)

先ほどまでと同様に、Bk=0の式を作りBの階数(rank)を調べ、解が全て0(自明な解)であるかどうかをチェックします。

\((u,v,w)\begin{bmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{bmatrix}=0\)

\(行列B=\begin{pmatrix}
1 & 3 & -2 \\
3 & 1 & 2 \\
5 & 2 & 3
\end{pmatrix}\)

を行の基本操作により、2行目ー(1行目×3)と3行目ー(1行目×5)を計算すると、

\(=\begin{pmatrix}
1 & 3 & -2 \\
0 & -8 & 8 \\
0 & -13 & 13
\end{pmatrix}\)

さらに3行目ー(2行目×13/8)を行うと、以下のように3行目が全て0になってしまうので、ランク=2であることがわかります。

\(=\begin{pmatrix}
1 & 3 & -2 \\
0 & -8 & 8 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\)

ここで、<再掲:「階段行列とrank・自由度」>より、自由度は3-2=1。

したがって解は1文字で表すことができます。

Bk=0の式を

\(\begin{pmatrix}
1 & 3 & -2 \\
0 & -8 & -8 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
k_{1} \\
k_{2} \\
k_{3}
\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
0
\end{pmatrix}\)

だから、

\(k_{1}+3k_{2}-2k_{3}=0\)

\(-8k_{2}-8k_{3}=0\)

0=0

この3つの連立方程式を解くと、\(k_{1}=2k_{2}-3k_{3},k_{2}=k_{3}\)

よって、係数の列ベクトルkは\(\begin{pmatrix}
k_{1} \\
-k_{1} \\
-k_{1}
\end{pmatrix}\)

なので、k_{1}=0の時は係数は全て(0,0,0)ですが、k_{1}=1ならば係数は(1,-1,-1)となりこれは線型独立の条件を満たしません。

ゆえに、ベクトル(u,v,w)は線形従属である。//

線形空間(1)まとめと次回(基底)へ

・今回はかなり分量が多かったかと思いますが、線形空間の8つの条件や、線形従属・独立の定義をしっかり復習しておきましょう。

・次回はこの『線形空間』における『基底・次元』と『部分空間』という重要な事項の解説を行います。

線形代数のまとめ記事と続編:部分空間へ

0から学ぶ!線形代数の解説記事まとめ」(これまでの記事が全てまとめてあります。)

(続編完成しました)

部分空間Wの定義と基底・次元を解説!(線形空間2)

 

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