有機化学:其の2(脂肪族/脂環式)
<この記事の内容>「【高校”有機化学シリーズ”】第一回:全体像の整理・分類」の続編として、CとHから成る炭化水素のうち、脂肪族・脂環式(〃)に分類されるものをザッと整理していきます。
【内容を随時追加していきます】
目次(タップした所へ飛びます)
脂肪族炭化水素とは
のちに解説する「“芳香族”炭化水素」(ベンゼンC6H6が含まれるもの)ではない、CとHから構成される化合物のことを言います。
アルカン
alkane
一般式:\(\mathrm{C_{n}H_{2n+2}}\)
この”CnH2n+2"は、アルカンの炭素数がn個の時、水素が2n+2個存在することを意味します。
このあと紹介する"アルケン"や"シクロカルカン"など、それぞれこの"CnH(nの式)"で表す事ができ、有機分野でも、最も点数配分が大きい『構造決定』・『不飽和度の計算』などの時にヒントになります。
(『ウデ(非共有電子対)』の数・『結合の種類』を判断するのに必須)なので、この記事中にしっかりと理解して覚えておいてください。
名称
-ane (-あん)が付く(一部の物質は慣用名の方が有名なので、そちらを使うものがあります)
例
メタン(meth-ane) CH4
エタン(eth-ane) C2H6
プロパン(prop-ane) C3H8
・
・
・
特徴
単結合のみからなる、最も基本的な脂肪族炭化水素です。
アルケン
次は、C同士の間で二重結合が生じている『アルケン』を見ていきます。
一般式\(\mathrm{C_{n}H_{2n}}\)と名称
”alkene”・” alkーene(-エン)と語尾につきます。
-ene(-エン)です。
エテン(慣用名:エチレン)\(\mathrm{C_{2}H_{4}}\)
プロペン(〃:プロピレン) \(\mathrm{C_{3}H_{6}}\)
特徴
最大の特徴は"二重結合"を持つことによる構造異性体の存在です。
二重結合によって、炭素間で立体的に回転することが出来なくなり、下の図のように同一平面上にC=Cが存在します。
この時、Cに結合する分子・原子の種類が異なる場合、『シス型・トランス型』の”2”種類の”構造”異性体が生じることになります。(異性体の記事で詳説)
また、これは脂環式の「シクロアルケン」も同じ性質を持つのですが、酸化剤(主にオゾン:O3、過マンガン酸カリウム:KMnO4)によって二重結合の部分が切れる「酸化開裂」と呼ばれる現象が生じます。
(これも構造決定で重要なkeyになります)
アルキン
alkyne
三重結合を持つアルキン(下図)の中でも、炭素数が2のアセチレンは特に頻出です。
一般式:\(\mathrm{C_{n}H_{2n-2}}\)と名称
- alkyne
alkーyne(ーイン)が語尾につきます。
C2H2 エチン(慣用名:アセチレン:acetylene)
C3H4:プロピン
特徴
三重結合である事、上述した様になかでもnが2のアセチレン(慣用名です。正式にはエチン)はベンゼンの原材料となることから超重要です。
<ベンゼンの生成反応>:\(\mathrm{3C_{2}H_{2}→C_{6}H_{6}}\)
<アセチレンの生成反応>:\(\mathrm{CaO+2H_{2}O→Ca(OH)_{2}+C_{2}H_{2}}\)
また、分子が回転できず一直線上にC骨格が並びます。
(アルカンは正四面体=立体、アルケンは平面である事と合わせて再度確認しておきましょう)
飽和・不飽和炭化水素
ここで用語の確認をしておきます。
アルカンのように『単結合』のみからなるものを『飽和』炭化水素と呼び、
『二重結合』や『三重結合』が存在するものを『不飽和』(〃)と呼びます。
臭素などの付加反応で検出
不飽和炭化水素が持つ”2or3重結合”のうち一つか二つは、付加反応を起こしやすく、それを利用して検出を行います。
具体的には、Br(臭素)などの色が付いた気体を反応させて、色が消える(=アルケン/アルキンに付加して単体ではなくなった)事で二重or三重結合を持つ事を確認します。
脂肪族環式炭化水素
ここまで見てきた、『アルカン/アルケン/アルキン』は全てC骨格が(枝分かれしていても)環状にはなっていませんでした。
次の2つ“シクロ”アルカンと“シクロ”アルケンは【環状】になっており、その為に「脂肪族」+「環式」=「脂環式炭化水素」と呼ばれるものです。
シクロアルカンと『シクロ』の意味
さて一つ目は「シクロアルカン」です。
有機化合物を学んだり、のちに構造決定などの問題を解く際には《名前の由来》を学んでおくと役に立ち、記憶にも残りやすいので、この事は常に意識しておいてください。
一般式【CnH2n】と特徴
さて、「シクロ」は『cyclo』からきており、英語のbi“cycle”やmotor“cycle”と同じく、「円状(環状)」の意味を持ちます。
さらに、この記事の一番初めに紹介した、「アルカン(alcane)」=飽和炭化水素(=単結合のみ)が加わるので、結局シクロアルカンは「炭素骨格が環状、かつ、全て単結合でつながっている」という事が分かるのです。
名称
シクロプロパン
環状になるためには最低3つのCが必要なことから、n=1,2のシクロアルカンが存在しません。
シクロアルケン
高校で主に学ぶ脂環式の2つ目を同様に見ていきます。
上の<イメージ>図中の右側のように、CHを書かずに二重結合の部分のみ線を引く書き方もあります。(このタイプは次回扱う芳香族・ベンゼン環で頻繁に用います。)
一般式【CnH2n-2】と特徴
お馴染みの『cyclo』さらに、プラス「アルケン(alkene)」=不飽和炭化水素(=二重結合)が加わります。
まとめると、シクロアルケンは「炭素骨格が環状、かつ、一箇所が【二重結合】でつながっている」という意味である事が分かります。
シクロプロペン (同様にn=3から始まります)
有機化合物その二まとめと続編
ここまで第一回・第二回目の今回と続けて、最も基礎的な『脂肪族』の炭化水素を見てきました。
次回はいよいよ超重要の有機物質である『六角形』の『ベンゼン』と、それを含む「芳香族」と呼ばれるグループを紹介していきます。
有機シリーズ(1),(2)の記事と芳香族へ
有機その一:「有機化学シリーズの全体像(意味・分類)の総整理」
有機その二:「(今ココです)脂肪族の基本事項の確認」
有機その三:「”ベンゼン環”と”芳香族”化合物」
今回も最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
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