背理法の手順とコツ(証明シリーズ)
この記事では、「背理法」の基本的な意味と、証明の手順・コツを問題付きで解説していきます。
他の証明法(数学的帰納法や対偶法など)とともにマスターする事で、試験での点数の配分が大きく“差が付きやすい”、【証明】分野を得点源にしていきましょう!
目次(タップした所へ飛びます)
背理法とは?
背理法とは証明の方法の一つで、『Aである』事を示すために、
一旦『Aが偽(=Aが正しくない)』と仮定し、その後Aが偽であるならば矛盾が生じることを利用して、Aが真(Aが正しい)である事を示す方法です。
・・・イマイチわかりにくいですね。
具体的な例で考えてみましょう。
背理法の具体例と使い方
背理法を使う証明問題の中でも、最も基本的かつ頻出のものを通して、背理法の手順をみていきましょう。
その前に少し無理数と有理数について解説しておきます。
・有理数(rational number : ratio=比で表せる→分数で表せる事が出来る数)
・無理数(irrational number : ratio=比で表せない→分数で表せない数の事です。)
√2はみなさんが知っての通り「無理数」です。(√2は分数で表せません!)
そこで、まず「√2=分数」で表すことができる(=有理数)、と言う間違った仮定を最初にしておきます。
具体的には、互いに素(二つの数字が1以外に約数を持たない)な2つの数(n,m)を分母と分子に置いておきます。√2=n/m
その後、式変形をしてnとmが互いに素ではない(=お互いに1とそれ以外の約数を持つ)という矛盾を示す事で、最初の仮定が誤りであると示します。
詳しい証明は以下に記述してあるので、「背理法」の意味が大雑把に分かれば下へ進んでください。
例√2が無理数であることを示せ
解答1:背理法の基本は、命題が偽である(間違えている)ものと仮定して矛盾を示す事でしたから、
命題が偽であると仮定する
√2が有理数であると仮定します。(無理数が偽→有理数)
有理数ならば、適当な(ふさわしい)互いに素な正の整数2つの分数で表すことが出来るはずなので、
√2=b/aとおきます。(a,bは互いに素な正の整数)
aは整数なので両辺にかけて
√2a=b
次に両辺を二乗します。
2a2=b2・・・(※)
矛盾を導き出す(背理法最大のポイント!)
ここで、左辺に2があるので右辺も2の倍数です。
b2が2の倍数ということは、bも2の倍数・・・(1)であるから、
<memo:このように証明問題の途中で〜の倍数が出てきたら、適当な文字を使って「〜の倍数」であることを表します。>
今文字:l(lは正の整数)をおく。
(1)より、bが2の倍数なので、
b=2l とおく事ができます。・・・(2)
$$(※)のbに(2)を代入すると、2a^{2}=4l^{2}$$
$$⇔a^{2}=2l^{2}$$
右辺が2の倍数なのでa2も2の倍数。同様にaも2の倍数。・・・(3)
<memo:ここで矛盾が生じます。aとbは互いに素な正の整数(1以外に約数を持たない関係)でした。
ところが、a,b共に2の倍数であるという事が(2)、(3)で示されたので、1以外の数(2の倍数)を約数に持つ事になることから、aとbは互いに素という仮定に矛盾が生じます。
従って、この仮定は偽である事になります>
(2),(3)よりaとbは2の倍数であり、互いに素に矛盾するので
√2が有理数という仮定は偽。背理法より√2は無理数。(証明終わり)
応用題:超良問!加法定理との融合
ここでは、背理法を扱う入試問題でも非常に有名な問題を通して演習していきます。
京大の06年の後期試験で、かなりの受験生が完答出来なかったという問題なので、解く必要はありません。(もちろん、自信のある人は時間をとって挑戦しましょう!)
ただ、解き方の流れをみているだけでかなり勉強になるので、解説を読んでみてください!
問:tan1°は有理数か。
この問いは、〜を示せという文にはなっていませんが、『有理数か無理数かの仮定を立てて、背理法で示す』問題です。
つまり、tan1°は(無理数/有理数)であることを主張して、それを背理法で示していきます。
有理数or無理数どちらを仮定する?
この証明の第1関門は、tan1°が有理数として証明を開始するか、無理数として始めるかです。
もちろんどちらの可能性もありますが、この様な問題の場合、大抵が無理数である事が多いです。(この辺りは慣れと経験が必要です。)
そこで、tan1°は無理数である事を証明してみます。
つまり、背理法の手順に従って
「有理数と仮定し→矛盾を導き出す→有理数は偽→よってtan1°は無理数である」の流れを目標にします。
この問題で最も重要な所は「どうやって矛盾を導き出すか?」です。
ここでは「加法定理・二倍角の公式」を使っていきます。詳しい流れは、以下よりご覧下さい。
<背理法を使った証明の流れ>
背理法を使って、
tan1°が無理数である事を示すために、
→tan1°が有理数と仮定
→加法定理(or二倍角)を使ってtan2°も有理数
→tan4°、8°、16°・・・も次々に有理数
→加法定理より、仮定ではtan(32°-2°)=tan30°は有理数、
$$→実際にはtan30°=\frac{1}{\sqrt{3}}は無理数であるので矛盾$$
→よってtan1°が有理数は偽
→tan1°は無理数
加法定理の利用:良問の宝庫
さて、流れは把握できたかと思うので、少し加法定理について復習しておきます。
加法定理を使う問題は良問が多いです。このリンク先の記事も『必ず』読んでおいて下さい!
$$\tan ( α \pm β ) =\frac {\tan α \pm \tan β}{1\mp \tan α \tan β }$$
解答
tan1°を無理数として背理法で示す。
tan1°が有理数と仮定すると、
$$tan2°=\tan ( 1°+1°)=\frac {\tan1° +\tan1°}{1- (\tan1°)(\tan1°) }$$
$$上の加法定理より、tan 2°=\frac{2tan1°}{1-(tan1°)^2}・・・(1)$$
$$(*イメージ)tan 2°=\frac{2有理数}{1-(有理数)^2}$$
よりtan 2°は有理数、同様にtan 4°、tan8°・・も有理数である。・・・(2)
$$ここで、tan30°を考えると\frac{1}{√3}・・・(3)無理数$$
もう一度tanの加法定理より、tan30°=tan(32°-2°)・・・(4)
(4)の左辺=無理数、一方で(4)の右辺は(2)より、:tan 2°は有理数。
かつtan32°も有理数なのでtan(32°-2°)は有理数。
ここで矛盾する為、仮定:tan1°は有理数は偽である。
よって、背理法よりtan1°は無理数である。
(証明終わり)
√3が無理数である事も背理法で示します
$$上の証明では、\frac{1}{√3}、\sqrt{3}$$
が無理数である事を証明無しで使っていますが、一応復習になるので、こちらも示しておきましょう。
証明法はこの記事のはじめの√2の流れと同じなので、5分ほど時間をとって自力で解いてみて下さい。
$$\sqrt{3}=\frac{n}{m}$$
とします。(m.nは互いに素な正の整数)mは整数なので両辺にかけて、√3m=n。
次に両辺を二乗します。
3m2=n2・・・(※)
ここで、左辺に3があるので右辺も3の倍数です。
n2が3の倍数ということは、nも3の倍数・・・(1)
ここで文字:l(lは正の整数)をおく。
(1)より、bが3の倍数なので、n=3lとおく事ができます。・・・(2)
(※)のnに(2)を代入すると、3m2=9l2
⇔m2=3l2
より、右辺が3の倍数なのでm2も3の倍数。同様にmも3の倍数。・・・(3)
(2),(3)よりmとnは3の倍数であり、”互いに素”に矛盾するので
√3が有理数であるという仮定は偽。よって、背理法より√3は無理数。(証明終わり)
証明記事一覧と必見記事まとめ
・「数学的帰納法とは?等式や公式を証明するコツをわかりやすく解説」
・「対偶法とは?逆・裏・対偶の意味と証明の仕方をわかりやすく!」
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