数列の漸化式の解き方シリーズ第八回:連立漸化式
第八回となる今回は、連立漸化式の解き方を解説していきます。
連立漸化式は特に確率と融合して、連立確率漸化式を解く問題が難関大を中心によく出題されます。
(2019/07/14更新しました。)
「連立確率漸化式の記事」を作成しました。
かなり重要な漸化式なので是非解き方をマスターしましょう。
これまでの「漸化式の解き方第一回から第七回総まとめ」は、←のまとめページよりご覧下さい。
目次(タップした所へ飛びます)
連立漸化式には2種類ある
連立漸化式とは、これまで1つの数列を扱っていたのと違い、
2つ(場合によっては3つの時も)の数列を扱います。
1:対称型の漸化式
対称型の連立漸化式とは、以下の例題のように{An}、{Bn}の係数がそれぞれの下のような形になっているものをいいます。
\(\begin{aligned}a_{n+1}=pa_{n}+qb_{n}\\
b_{n+1}=qa_{n}+pb_{n}\end{aligned}\)
このタイプの場合は、「対称式は和と差を作る」という方法に従って解いていきます。
対称型は2つの数列の和・差を作る
(例題1)
以下の漸化式を解き、一般項anとbnを求めよ
\(\begin{aligned}a_{n+1}=5a_{n}+3b_{n}\cdots(1)\\
b_{n+1}=3a_{n}+5b_{n}\cdots(2)\\
a_{1}=1,b_{1}=2\end{aligned}\)
\((1)と(2)を足してa_{n+1}+b_{n+1}=8( a_{n}+b_{n}) \)
an+bn=cn、c1=3とおくと、
\(C_{n+1}=8C_{n}⇔ C_{n}=3\times 8^{n-1}\)
一方で(1)と(2)の差を作って、
\(a_{n+1}-b_{n+1}=2( a_{n}-b_{n}) \)
\(a_{n}-b_{n}=d_{n}とおいて、d_{n+1}=2d_{n},d_{1}=-1より\)
\(d_{n}=(-1) \times 2^{n-1}\)
以上より、\(\begin{aligned}a_{n}+b_{n}=( 3) \cdot 8^{n-1}\\
a_{n}-b_{n}=(-1) \cdot 2^{n-1}\end{aligned}\)
上下を足して2で割ると、
\(a_{n}=( \frac {3}{2}) \cdot 8^{n-1}+( \frac {-1}{2}) 2^{n-1}\)
上下を引いて2で割ると、
\(b_{n}=(\frac {3}{2}) \cdot 8^{n-1}-( -\frac {1}{2}) \cdot 2^{n-1}\)
2:非対称型の連立漸化式
非対称型の連立漸化式は、上の対称型と異なり係数部分が異なっているので別の解き方が必要になります。
有名な解法は、3項間漸化式型に帰着させる方法と、等比数列に帰着させる方法があります。
【参考】下3つの解法に不安が有れば是非ご覧下さい↓
非対称型の解き方2種類(3タイプ)
今回は等比数列帰着型で解説していきます。
(例題2):具体例
以下の連立漸化式を解き、一般項anとbnを求めよ。
$$\begin{aligned}a_{n+1}=2a_{n}+b_{n}\\
b_{n+1}=4a_{n}-b_{n}\end{aligned}$$
ただし、a1=1、b1=4とする。
等比数列帰着での解法解説
\(a_{n+1}+\beta b_{n+1}=\alpha ( a_{n}+ \beta b_{n})\) のカタチ(*)に変形させると
等比数列型に帰着して解けるようになるので、
まず左辺のan+1& bn+1を代入して消していきます。
\(a_{n+1}+\beta b_{n+1}=(2a_{n}+b_{n})+\beta( 4a_{n}-b_{n}) \)
上の式を、anとbnでくくると、
\((*)の左辺=a_{n+1}+\beta、 b_{n+1}=( 2+4\beta ) a_{n}+(1-\beta) b_{n}\)
\(次に(*)の右辺を整理して、\alpha( a_{n}+\beta b_{n}) =\alpha a_{n}+\alpha\beta b_{n}\)
ここで、右辺と左辺は恒等式なので、係数を比べると
( 2+4β) =α、( 1-β) =αβ
\(\alphaを右の式に代入すると\begin{aligned}1-\beta =\beta ( 2+4\beta ) \\
⇔ 4\beta ^{2}+3\beta -1=0\end{aligned}\)
これを解いて( α ,β ) =( -2,-1) ,( 1/4,3)
\(a_{n+1}+\alpha b_{n+1}=\beta ( a_{n}+b_{n})\)
の式にαとβを代入して二つの式を作ると、
\(\begin{aligned}a_{n+1}-b_{n+1}=-2(a_{n}-b_{n}) \\
a_{n+1}+3b_{n+1}=\frac {1}{4}(a_{n}+3b_{n}) \end{aligned}\)
\(上のa_{n+1}-b_{n+1}をc_{n+1}\)
\(a_{n+1}+3b_{n+1}をd_{n+1}\)とそれぞれおくと等比数列型になるので、これを解いて
\(一般項c_{n}=a_{n}-b_{n}とd_{n}=a_{n}+\frac {1}{4}b_{n}は\)
以下の様になります。(等比数列型の解説は上のリンクよりご覧下さい)
\(\begin{aligned}a_{n}-b_{n}=\left( -2\right) ^{n\cdot 1}\left( -3\right) \\
a_{n}+\frac {1}{4}b_{n}=\left( 3\right) ^{n-1}\left( 2\right) \end{aligned}\)
更に上の式を連立させて、一般項Anとbnは、
\(a_{n}=\frac {1}{5}\{ 8×3^{n-1}-3( -2) ^{n-1}\} \)
\(b_{n}=\frac {4}{5}\{ 2×3^{n-1}+3\times ( -2) ^{n-1}\} となります。\)
まとめ
冒頭でも紹介しましたが、連立漸化式は場合の数・確率と非常に相性が良い上、
受験生が苦手としている二つの単元を同時に問えるので特に難関大入試で頻出します。
そこで、苦手な人が多い連立確率漸化式を習得すればかなりのアドバンテージを得られます。
→確率連立漸化式の解き方←作成しました!
その為にも、連立漸化式の解き方はしっかりとこの記事でマスターしておいて下さい。
次回予告:漸化式最終回(一般項を予測→数学的帰納法で証明)
数列漸化式シリーズも残すところ後一回となりました。
次回は「数列の一般項を予想して、数学的帰納法を使って証明する」を扱います。
漸化式の解き方はパターンが多いので、何度も復習しておく事が大切です。「漸化式の解き方まとめ」をたまに覗いて、忘れているタイプが無いかチェックする様にしましょう↓
「漸化式の解き方を0から分かりやすく解説!全11記事を厳選しました」を読んで、
漸化式をマスターして下さい!
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