酸化還元滴定(1)

 

酸化還元滴定は酸/塩基の中和反応よりも複雑だと思っていませんか?

この記事では、

・酸塩基反応との違い

・酸化還元滴定に必須の「半反応式」の記憶量を激減させる方法

・酸化還元滴定の手順

・実際に上で学んだ事を定着させる問題

をそれぞれ解説していきます。

更に次回は、今回の内容をもとに

確実に差を付けるために必須のCOD(化学的酸素要求量)やBOD、ヨージメトリー/ヨードメトリーをスラスラと解ける方法を紹介していきます。

文中に関連記事を載せているので、酸化還元反応の初心者でも是非読んでみてください!

酸化還元滴定とは

酸化還元反応を利用して、濃度未知の酸化剤/還元剤に濃度が分かっている還元剤/酸化剤を滴定する事で未知の濃度を求める事を言います。

酸塩基の中和滴定とイメージは似ていますが、いくつか相違点があります。

酸塩基の中和滴定との違い

酸塩基の中和滴定とは何が違うのでしょうか?

酸塩基反応と酸化還元について詳しくは

>>「酸塩基反応と酸化還元反応の違いを答えられますか?」<<

で解説していますが、ポイントは

$$・酸・塩基はプロトン(H^{+})の受け渡し$$

$$・酸化・還元は電子(e^{-})の受け渡し$$

であることが最大の違いです。

酸化還元滴定と指示薬

高校レベルの酸化還元滴定では、酸塩基の中和滴定と違い指示薬を使いません。
酸化還元指示薬自体は存在するのですが、高校化学の範囲内では使いこなせないのです。

代わりに、酸化剤or還元剤そのものの色が変化する事で、過不足なく反応が終了した点(これを当量点と言います)が分かる酸化・還元剤のみ出題されます。

酸化剤と還元剤の半反応式の作り方

酸化還元滴定では、酸化剤・還元剤の電子のやり取りを使って問題を解いていきます。その際に酸化剤・還元剤の半反応式を書けることは必須です。

参考:「化剤と還元剤を酸化数で見分ける方法

半反応式の【一部】だけ覚える

しかし、半反応式の全てを覚える必要はありません!

記憶するのは、酸化剤/還元剤の変化だけ!

例えば、教科書に過マンガン酸カリウム(酸化剤)の半反応式が載っていると思います。

$$(MnO_{4})^{-}+8H^{+}+5e^{-} →Mn^{2+}+4H_{2}O$$

これが十数個あるので、半反応式を全て覚えることは労力がかかるだけでなく、ミスの可能性も増えて何もいい事が有りません。

そこで、見出しにも書いたように覚えることは「酸化剤/還元剤」が変化する所だけ(過マンガン酸カリウムなら$$(MnO_{4})^{-}→Mn^{2+}$$だけ)にします。

酸化剤で覚えること

$$(MnO_{4})^{-}\rightarrow Mn^{2+}【酸性条件】$$

$$(MnO_4)^{-}\rightarrow MnO_{2}【中性条件】$$

$$オゾン:O_{3}\rightarrow O_{2}$$

$$二クロム酸カリウム(Cr_{2}O_{7})^{2-}\rightarrow 2Cr^{3+}$$

$$X_{2}\rightarrow 2X^{-}【Xはハロゲンを意味します】$$

$$H_{2}SO_{4}\rightarrow SO_{4}【熱濃硫酸の時】$$

$$HNO_{3}\rightarrow NO_{2}【濃硝酸】$$

$$過酸化水素:H_{2}O_{2}\rightarrow 2H_{2}O$$

還元剤で覚えること

$$H_{2}C_{2}O_{4}\rightarrow CO_{2}【シュウ酸】$$

$$M\rightarrow M^{n+}【Mは金属】$$

$$二酸化硫黄:SO_{2}\rightarrow SO_{4}^{2-}$$

$$硫化水素:H_{2}S\rightarrow S$$

$$ヨウ化物イオン:2I^{-}\rightarrow I_{2}$$

$$(2S_{2}O_{3})^{2-}\rightarrow (S_{4}O_{6})^{2-}$$

$$鉄(2)イオン:Fe^{2+}\rightarrow Fe^{3+}$$

$$H_{2}O_{2}\rightarrow O_{2}$$

半反応式はその場で作る

上記の酸化剤/還元剤の変化を覚えることが出来れば、半反応式は以下の手順で作ることができます。

例として「過マンガン酸カリウム(酸性条件下)」の半反応式を作ります。

半反応式作成手順その一:一部を書く

$$覚えた酸化剤/還元剤の部分を書く$$

$$(MnO_{4})^{-}\rightarrow Mn^{2+}$$

その二:水で調整

$$左右の式で酸素Oの数が同じになる様に、水(H_{2}O)で調整する$$

$$ここでは、反応物にOが4つあり、$$

$$生成物にはOがありませんから、$$

$$生成物側にH_{2}Oを4つ加えることで$$

$$Oの数が等しくなります。$$

$$(MnO_{4})^{-}\rightarrow Mn^{2+}+4H_{2}O$$

その三:水素イオン(プロトン)で調整

$$今度は、水素Hの数が同じになる様にH^{+}で調整する$$

$$次は【その2】で4つH_{2}Oを加えた為に$$

$$水素Hの数が反応物側0、生成物側8となっています$$

$$。従ってH ^{+}を8つ反応物側に$$

$$足すことによって水素の数が釣り合います。$$

 

$$(MnO_{4})^{-}+8H^{+}\rightarrow Mn^{2+}+4H_{2}O$$

その四:電荷を電子で調整

$$最後に左右の電荷を電子e^{-}で調整すれば半反応式が完成!$$

$$電荷の偏りを調整します。$$

$$反応物側は +7、生成物側は +2より、$$

$$電子e-を5つ反応物側に加えることで$$

$$共に +2となって電荷も等しくなります。$$

$$(MnO_{4})^{-}+8H^{+}+5e^{-}\rightarrow Mn^{2+}+4H_{2}O$$

始めは大変そうに見えますが、一度慣れれば丸暗記よりもはるかに効率よく +ミスなく半反応式を作ることができる様になるので、是非この方法をマスターして下さい!

酸化還元滴定の手順

さて、いよいよ実際に酸化還元滴定を見ていきます。

過マンガン酸カリウムと過酸化水素の滴定

$$過マンガン酸カリウムの滴定はヨウ素滴定と$$

$$共に最も基本的で、かつ重要な酸化還元滴定です。$$

$$問:濃度不明の過酸化水素を50倍に薄め、$$

$$その中から50mlを三角フラスコに入れて$$

$$蒸留水と希H_{2}SO_{4}を加えた。(図の左端)$$

$$この溶液に0.05(mol/L)の過マンガン酸カリウム水溶液を$$

$$滴定すると、20ml滴定した時点でフラスコ内が色付き始めた。(図の右端)$$

$$薄める前の過酸化水素の濃度を求めよ。$$

酸化還元滴定の流れ

解答解説

 

この滴定の仕組みの解説

$$この滴定では、図のように水溶液が色付き始めた$$

$$⇔(MnO_{4}) ^{-}の色が消えなくなった$$

$$=過酸化水素が全て反応した、という風にして$$

$$指示薬なしで当量点が分かる様になっています。$$

希硫酸を加える理由

過マンガン酸カリウムは、酸性条件下でも中性条件下でも酸化剤として働きます。ではなぜ酸性条件にするのでしょうか?

$$酸性では、(MnO_{4}) ^{-}→Mn^{2+}$$

$$中性では、(MnO_{4}) ^{-}→MnO_{2}$$

大事な点は、過マンガン酸カリウムが単なる酸化剤だけでなく、指示薬の役割を果たしているということです。

$$Mn^{2+}は無色ですが、MnO_{2}は有色です。$$

$$という事は、中性条件下でこの滴定を行った場合、$$

$$いつ当量点に達したか判断出来ないのです。$$

では、酸性条件にするなら塩酸でも硝酸でもいいのでは?

$$これも良く問われます。$$

$$結論から書くと塩酸はCl ^{-}が還元剤として働き、$$

$$硝酸は酸化剤として働く為に、$$

$$正確な滴定ができなくなってしまうので、$$

$$そのどちらにもならない硫酸が使われるのです。$$

解答の手順

では本題に入ります。

$$まずは、過酸化水素と過マンガン酸カリウム(酸性条件下)$$

$$の半反応式を作ります。$$

$$(MnO_{4})^{-}+8H^{+}+5e^{-}\rightarrow Mn^{2+}+4H_{2}O$$

$$H_{2}O_{2}\rightarrow O_{2}+2H^{+}+2e^{-}$$

$$そして、過酸化水素の濃度をx(mol/L)とおき、$$

$$還元剤(H_{2}O_{2})の放出したe ^{-}の数=酸化剤(MnO_{4})^{-}の$$

$$受け取るe ^{-}の数となる様に立式していきます。$$

$$x\times \frac{1}{50}\times 0.05\times 2=0.05\times 0.02 \times 5$$

$$これを解いてx=2.5(mol/L)$$

$$従って過酸化水素のmol濃度:2.5(mol/L)となります。$$

次回予告と関連記事

次回は、酸化還元滴定の応用編「ヨウ素滴定」から、「ヨードメトリーとヨージメトリー」を解説していきます。

この記事が基礎になるので、何度も読み返して復習しておいてください!

#2018/10/13更新

CODとは?化学的酸素要求量の手順と問題の解き方を分かりやすく解説!」を作成しました!

<酸化還元とイオン化傾向の記事一覧>

酸化還元反応シリーズ

第1回:「酸塩基反応と酸化還元反応の違いを答えられますか?

第2回:「イオン化傾向と酸化還元反応(電池)

第3回:「ダニエル電池の計算問題とファラデー定数

第4回:「電気分解とは?電池との違いと陽極/陰極でのルール

第5回:「イオン化傾向とイオン化エネルギーの違いとは?

第6回:「酸化剤と還元剤を酸化数を使って見分ける方法

第7回:「アルミニウムの性質と酸化還元反応を利用した融解塩電解

第8回:「今ココです」

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