酸塩基反応と酸化還元反応のたった一つの違い
化学を学んでいると、様々な場所で酸塩基反応や酸化還元反応に出くわします。
言葉が紛らわしいだけでなく『滴定』などは手順も似ており、はっきりと定義を理解できていない人が多い分野です。
この記事では、1行でこの2つの違いを紹介し、詳細な解説と関連記事をまとめました。
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酸化還元反応と酸塩基反応の違いとは
以前の記事「電気陰性度、イオン化エネルギー、電子親和力の違いを説明出来ますか?」では電気陰性度・電子親和力・イオン化エネルギーの違いを解説しました。
この様に基礎的な、そして似ているが違うものの定義をしっかり理解すると、面白い様に化学の各々の問題や分野が点から線へつながっていきます!
逆にこの様な基礎的な定義をおろそかにして、問題集を解いていてもいつか足をすくわれます。
(解法暗記の限界です。難関大になればなるほどこの傾向は強くなります)
更に2020年以降の大学入試改革を見据えてなのか、これらの本質的な理解が問われる機会が増えていきそうです。
(これは化学に限らず全ての教科でその傾向が見られます。ex,最近のセンター試験等)
さて本題です。答えは、陽子の授受か電子の授受かの違いです
“酸・塩基反応は陽子の授受、酸化還元反応は電子の授受”
です。正しく答えられたでしょうか?
それとも「ん??」とまだイマイチピンと来ないでしょうか?
安心して下さい、後者の方が圧倒的に多いです。これから解説していきます。
まず酸と塩基について。
中学校で学ぶ内容では、水溶液中で電離した時H+(水素イオン)を出す物が酸、OH-(水酸化物イオン)を出す物が塩基である!となっています。
これをアレーニウスの定義と呼びます。
しかし、これではアンモニア(NH3)が塩基性である事の説明がつきません。
水溶液中で電離するOHーが無いからです。
そしてこの欠点を克服したものが、
ブレンステッド=ローリーの定義です。
これは、「酸とはH+を相手に与える物資、逆に塩基とはH+を受け取る物資」というものです。
この定義によってアンモニアが塩基出る事の説明がつく様になりました。つまり、
\(\mathrm{H_{2}O+NH_{3}⇄NH^{4+}+OH^{-}}\)
H2Oが酸になり、H+をアンモニアに与えることでアンモニウムイオンと水酸化物イオン
に電離し、水溶液はOH-がとけた状態で塩基性となり、矛盾しません。
「pH(水素イオン指数)の求め方と水素イオン濃度をわかりやすく解説!」を作成しました。
「電離度αの小さい弱酸・弱塩基のpHの求め方と電離平衡の解説」を作成しました。
やり取りされるH+は、プロトン(陽子)と言われます。なぜか?
水素原子は陽子一個中性子0個電子一個でした。\(H^{+}はそこから電子e^{-}\)が抜けて一価の陽イオンとなっています。
ということは、陽子1個、中性子0個、電子0個になり、これはもはやただの陽子です。
従って”ブレンステッド=ローリーの定義”では、水素イオンの交換とは言わず陽子(プロトン)の交換と呼ぶのです。
以上より、酸塩基反応は陽子の交換、すなわち正電荷の交換であると言えるのです。
酸化還元反応が電子の交換である事について。
酸化還元反応も元々は酸素と化合(文字どうりですね)=酸化、その反対を還元としていたのですが、酸素が関係しなくても酸化還元反応が起こる事があり、
(例:イオン化傾向の違う金属同士の反応\(\mathrm{Cu^{2+}+Zn→Zn^{2+}+Cu}\)
酸化還元反応は酸素ではなく電子\(e^{-}\)のやり取りである事が分かりました。
そこで、現在では電子e-のやり取りイコール酸化還元反応と呼ぶ事になりました。
酸化還元反応に必須の酸化数については、
→「酸化数を理解して酸化剤と還元剤を見分ける方法」をご覧下さい!
酸塩基反応まとめと関連記事
・酸塩基反応は陽子=正電荷の授受である。
・酸化還元反応は電子=負電荷の授受である。
酸化還元反応についての記事を連載中です。
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続編「弱酸の電離平衡とどれだけ酸を薄めてもpHが7を超えない理由」
酸化還元反応シリーズ
第1回:「酸塩基反応と酸化還元反応の違いを答えられますか?」←今ここです
終わりに
ここまで読んでくださった方の中には、中性子は何か役割が無いのか?と思われた人もいるかもしれません。
実は中性子と陽子との間で反応が起こっています!高校範囲をはるかに超えるので、ここでは省きますが、興味のある方は“中間子論”で調べてみて下さい。
かの湯川秀樹先生のノーベル物理学賞受賞の理由となり、現代物理学に繋がる大変興味深い反応(理論)です。