
万有引力/宇宙速度/ケプラーの法則/講座第2回
この記事を読んで下さっているあなたは、
宇宙速度の範囲で「万有引力の位置エネルギー」がマイナスになる事に違和感があるのでは無いでしょうか?
このページを読み進めることで、その理由が分かるだけでなく
・万有引力の位置エネルギーそのものが導出できる様になり
・地球脱出速度(第二宇宙速度)を計算できる様になります
ぜひじっくりと読んでみてください!
目次(タップした所へ飛びます)
第二宇宙速度とは?
前回→「第一回:第一宇宙速度とは?」の続編です。
今回は、「第二宇宙速度」を扱います。
第一宇宙速度よりさらに大きい初速度を与えることで、<図1>の様な地球上の周回(円運動)を離れ、
<図1>
<図2>の様に、無限遠に向かって飛んで行ってしまう為に必要とされる初速度のことを「第二宇宙速度」と言います。
<図2:第二宇宙速度のイメージ>
第二宇宙速度は、第一宇宙速度と違い運動方程式から求めることができません。
そこで、「力学的エネルギー保存則」を用いて計算する必要があります。
力学的エネルギー保存則
力学的エネルギー保存則はある程度理解しているものとして進めます。
<参考:上級者向け「運動方程式から、力学的エネルギー保存則と運動量保存則を導く方法」>
基本的に、力学的エネルギーは、「運動エネルギー」、「位置エネルギー」、「バネ等による弾性エネルギー」で構成されます。
そして、外部から仕事をされたりしない限りは(運動エネルギー+位置エネルギー+バネ等による弾性エネルギー=一定)が成り立ちます。(=これが『力学的エネルギー保存則』ですね)
ここで、どの様に立式すれば“地球から無限に離れられる”条件を満たす、v2(第二宇宙速度)を求めることができるかを考えてみます。
負の万有引力による位置エネルギー
今から説明するのは、多くの人が違和感を覚える万有引力による「ー(マイナス)」の位置エネルギーです。
その原因は、「位置の基準を地上に置いているから」です。
普段の力学ならば、基準を地面:高度0として位置を考えるのでマイナスのエネルギーが出てきません。
しかしながら、今はもっと広い宇宙の果て(無限遠)を基準=高さ0にするので地上では当然それより低く、位置エネルギーはマイナスになります。<図3>
<図3重力と万有引力による位置エネルギーの違い>
万有引力の位置エネルギーの導出
この項は、数学Ⅲの積分を利用するので未習の人は結果だけ見てもらって結構です。
以前の記事(「これで解ける!一から始める単振動」)でも書いたのですが、物理(特に力学)は軸のとり方と正方向の把握が非常に大切です。
<図3>の様に正方向は地上→無限遠です。
従って、万有引力は下向き(軸の正方向と逆)に働くので、
$$\int ^{\infty }_{r}-Fdx=\int ^{\infty }_{r}-G\frac {Mm}{x^{2}}dx$$
$$⇔[ \frac {GMm}{x}] ^{\infty }_{r}=\frac {GMm}{\infty }-\frac {GMm}{r}$$
$$=-\frac {GMm}{r}$$
力学的エネルギー保存則から第二宇宙速度を求める
ここで、半径Rの地球上から無限遠まで到達する第二宇宙速度を求めるために、力学的エネルギー保存則の式をたてます。
(左辺)は、(物体の運動エネルギー+万有引力による位置エネルギー)
(右辺)は、(無限遠での物体の運動エネルギー+無限遠(基準)での万有引力による位置エネルギー)
です。
$$\frac {1}{2}mv^{2}_{2}+\frac {( -GMm) }{R}=\frac {m}{2}v^{2}_{\infty }+( -\frac {GMm}{\infty })$$
ここで、右辺に注目すると、無限遠での万有引力による位置エネルギーは
$$( -\frac {GMm}{\infty })=0$$
そして、残りの「無限遠での運動エネルギー」が0以上であれば、
無限遠の地点で止まる(v∞=0 ),もしくは無限遠の地点でもさらに運動を続ける(V∞>0)ことから、v∞≧0が地球に二度と戻ってこない条件になります。
$$従って、\frac {1}{2}mv^{2}_{2}+\frac {( -GMm) }{R}=\frac {m}{2}v^{2}_{\infty }+( -\frac {GMm}{\infty })$$
$$\frac {1}{2}mv^{2}_{2}+\frac {( -GMm) }{R}≧0$$
ここでは、m>0よりmで割っても符号は変わりません
$$\frac {1}{2}u^{2}\geq G\frac {M}{R}$$
$$v^{2}_{2}\geq \frac {2MG}{R}⇔ v_{2}\geq \sqrt {\frac {2MG}{R}}$$
$$よって、v_{2}=\sqrt {\frac {2MG}{R}}が第二宇宙速度の式です$$
<参考>実際に第二宇宙速度を求めてみる
さて、前回の記事「第一宇宙速度と万有引力を向心力とした円運動」で、
$$第一宇宙速度(v_{1}=\sqrt {\frac {MG}{R}})が$$
おおよそ7.9(km/s)であると言う計算をしました。
第二宇宙速度はこれよりも当然速いはすです。そこで、今回も大体の速度を計算してみましょう。
・M:地球の質量 5.97≒6× 1024 (Kg)
・R:地球の半径 6.4×106 (m)
・v2:第二宇宙速度 ?(m/s)
・G:万有引力定数 6.7× 10-11 (m3/s2×Kg)
・v∞:無限遠における物体の速度: 0以上であれば良い
$$これを先ほどのv_{2}=\sqrt {\frac {2MG}{R}}の式に代入していきます。$$
$$整理して、v_{2}=\sqrt {\frac {2×6×10^{24}× 6.7× 10^{-11}}{6.4× 10^{6}}}$$
を計算すると、第二宇宙速度:v2はおよそ11.2(km/s)となります
第1/第二宇宙速度の関係
ここで気づいておきたいことは、第一宇宙速度と第二宇宙速度の関係です
$$v_{1}=\sqrt {\frac {MG}{R}}と、$$
$$v_{2}=\sqrt {\frac {2MG}{R}}を見比べると$$
$$v_{1}× \sqrt {2} = v_{2}であることが分かります。$$
よって第二宇宙速度は、第一宇宙速度の√2 倍になる事が分かります。
(+α:第三宇宙速度について)
実際には、地球の重力を振り切っても太陽系を脱出するにはさらに大きな速度が必要になり、
これを「第三宇宙速度」と言います。
しかしこれには太陽などさらに複雑な要因が絡んでくるため、相当レベルが上がります。
従って、第三宇宙速度についてはケプラーの法則を学んだ後に解説記事を載せたいと思います。
まとめと次回予告(ケプラーの法則へ)
・第二宇宙速度とは、地上なある物体が無限遠に向かう(戻ってこない)為に必要な初速度の事
・第一宇宙速度と違い、運動方程式では求められないので、力学的エネルギー保存則を使って求める
・位置エネルギーは、万有引力の積分で求めることが出来、基準が無限遠なので通常は負の値をとる
・第二宇宙速度はおよそ 11.2 (km/s)
・第二宇宙速度は第一宇宙速度の√2倍である
次回は、ケプラーの第1〜第3法則の解説に入ります。(2018/08/18完成しました!)
第一回:「第一宇宙速度と万有引力を向心力とする円運動」に戻る。
第二回:今ココ
↓第三回を読む!↓
第三回:「ケプラーの第1/第2/第3法則と楕円の性質をイラスト付きで徹底解説!」を読む。
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