二項定理とはさみうちの原理の使い方
今回は、以前に紹介した二項定理の解説記事と、
色々な極限の問題を解説していきます。
この種の問題では、はさみうちを使う為に「上手くはさみこむ」必要があり、
そのコツと流れを問題を通して習得出来るように丁寧な解説付きの良問を掲載しました。
目次(タップした所へ飛びます)
二項定理とはさみうちの原理
簡単に復習しておきます。(あくまで簡単になので、詳しくは上の2記事を是非先にご覧下さい。)
二項定理とは
$$(a+b) ^{n}=\sum ^{n}_{k=0}nC_{k}xa^{n-k}b^{k}$$
( a+b)nを展開した式が
右辺の式の総和を使って表されるというものです。
はさみうちの原理とは
はさみうちの原理とは、関数f(x)、g(x)、h(x)があった時に(関数だけでなく数列の時も同様の考え方が成り立ちます)
g( x) ≦ f( x)≦h( x) かつ
\(\lim _{x\rightarrow α }g( x) =β ,\)
\(\lim _{x\rightarrow α }h(x) =β\)ならば、
\(\lim _{x\rightarrow α }f(x) =β\) という事を言っています。
つまり、「上下の関数/数列がある値に収束する」、ならば、「それらに挟まれた真ん中の関数/数列もその値に収束する」
という意味です。
追い出しの原理とは
追い出しの原理は、はさみうちの原理の仲間のようなものです。
g( x) ≦ f( x) の時、
\(\lim _{x\rightarrow \infty }g( x) =\infty\)ならば、
\(\lim _{x\rightarrow \infty }f( x) =\infty\)
考え方は、小さい方の関数/数列ですら∞へ発散するのだから、それよりも大きいf(x)は∞へ発散するというものです。
こちらも、はさみうちの原理と同様に数列の時も成り立ちます。
極限の発散を証明してみる(式変形に注目して下さい)
具体的な問題でこれまでの知識を応用してみましょう。
追い出しの原理と二項定理で数列の発散を示す
(例題1)$$r >1の時、\lim _{n\rightarrow \infty }r^{n}=\infty を示せ$$
r=( 1+a)(a >0とおくと)
rn=( 1+a)n
二項定理より、
$$(1+a) ^{n}=1+nC_{1}( a) +nC_{2}( a^{2}) +\ldots $$
$$⇔ ( 1+a) ^{n}=1+na+\frac {n( n-1) }{2}a^{2}+\ldots $$
$$a >0,n→ \infty ,より\frac {n( n-1) }{2}a^{2}$$以降の後の項も全て正。
よって、\(r^{n}=(1+a) ^{n}\geq 1+na\)
\(\lim _{n\rightarrow \infty }1+na=\infty\)だから、
\(1+na≦ r^{n}\)と、追い出しの原理より
\(\lim _{n\rightarrow \infty }r^{n}=\infty\)
極限値を求めてみる
上では発散の証明問題を扱いましたが、この項では(極限)値を求めるパターンと解法の流れを見ていきます。
二項定理とはさみうちで極限値を求める
$$\lim _{n\rightarrow \infty }\frac {n^{2}}{2^{n}}の極限値を求めよ$$
$$\lim _{n\rightarrow \infty }\frac {n^{2}}{2^{n}}を求めれば良いが、$$
この極限は示しにくいため、この様な時は大抵はさみうちの原理を使うことが多いです。
そして、はさみうちの原理を使うのに必要な不等式を「二項定理」から作り出します。
ここから、はさみうちを使うまでの「不等式を作るまでの流れ」は誘導がつく事が大抵ですが、
誘導なしでも類題が出た時に思いつくように、よく式変形を頭に入れておいてください。
はじめに、2=( 1+1) ,2n=( 1+1)n
$$2^{n}=( 1+1) ^{n}=1+nC_{1}+nC_{2}+nC_{3}+\ldots $$
2は1+1の結果なので、(無理矢理?)2のn乗=(1+1)のn乗に式変形しています。
$$=1+n+\frac {n( n-1) }{2}+\frac {n( n-1) ( n-2) }{6}+\ldots $$
$$\begin{aligned}2^{n}=1+n+\frac {n( n-1) }{2}+\frac {n( n-1) ( n-2) }{6}+\ldots \\
\geq 1+n+\frac {n( n-1) }{2}+\frac {n( n-1) ( n-2) }{6}\end{aligned}$$
↑の不等式は、(・・・の部分が正である事から)、“途中で足し合わせを止めた式”の方が小さいと言う意味です。
$$\begin{aligned}2^{n} ≥1+n+\frac {n( n-1) }{2}+\frac {n( n-1) ( n-2) }{6}\\
=\frac {n^{3}+5n+6}{6} >\frac {n^{3}}{6}\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}2^{n}\geq \frac {n^{3}+5n+6}{6} >\frac {n^{3}}{6}\\
\Rightarrow 2^{n} >\frac {n^{3}}{6}\end{aligned}$$
$$ここで、\lim _{n\rightarrow \infty }\frac {n^{2}}{2^{n}}を求めたかったので$$
$$2^{n} >\frac {n^{3}}{6}$$から、上手く目標の分数$$\frac {n^{2}}{2^{n}}$$のカタチへ
変形して行きます
$$逆数をとって\frac {1}{2^{n}} <\frac {6}{n^{3}}、0 <\frac {1}{2^{n}}より$$
$$0 <\frac {1}{2^{n}} <\frac {6}{n^{3}}全体にn^{2}を掛けると$$
$$0 <\frac {n^{2}}{2^{n}} <\frac {6}{n}$$
$$ここで、\lim _{n\rightarrow \infty }\frac {6}{n}=0より$$
$$はさみうちの原理から、\lim _{n\rightarrow \infty }\frac {n^{2}}{2^{n}}=0$$
・・・これで極限値がゼロである事がわかりました。
まとめ
この様な極限の証明のポイントは、上手くはさみうちの原理や追い出しの原理が使えるカタチを作る事です。
その為に二項定理を活用して、必要に応じて式変形します。
中には、経験していないと思いつかない物=「コツ」もあるので、
この記事で大体の流れが理解出来たら、類題、演習題に忘れないうちに取り組んでみて下さい!
今回もご覧いただき有難うございました。
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