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執筆者・編集者プロフィール
安田周平
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天然高分子化合物の攻略1

 

天然高分子化合物シリーズの索引

この記事でまとめた内容

・この記事とシリーズを読むべき理由
・天然高分子化学の概観
・基本単位(モノマー)である“アミノ酸”
・双性イオンと等電点
・覚えておくべき接頭辞
・アミノ酸を覚える前に
・主要なアミノ酸の名称・性質

・ペプチドとは?
・タンパク質とペプチドの違い

次回にまとめる内容(順次更新していきます)

・タンパク質/ペプチドの検出方法
・タンパク質の構造
・タンパク質の性質と各種タンパク質

・DNAとRNAの違いと構造

・糖類概観
・単糖類の種類と性質
・二糖類/多糖類の種類と性質/構造

早めに高分子化合物分野に取り組むべき理由

1、時代の要請(生命科学の飛躍的な進歩)で、高分子化学の重要性と入試でのウェイトが大きくなりつつある

2、それにも関わらずカリキュラムの都合で多くの受験生が不完全なまま入試をむかえる

3、また初見では非常に複雑に感じられ、苦手意識を持ちやすい

4、しかし、高分子化合物は正確な理解と記憶によって点が伸びやすい=努力が報われやすい分野である

従って、早くからコツコツと高分子分野を攻略しておけば、その他大勢の受験生に対して大きなアドバンテージを得る事が出来る。

 

天然高分子化学の概観

天然高分子には

アミノ酸(アミド結合)ーペプチド(ペプチド結合)ータンパク質/のアミノ酸を起点とした一連の化合物の他にも、
単糖類ー二糖類ー多糖類/の糖、
また糖とリン酸及び特定の塩基からなる化合物であるDNA・RNAなどがあります。

基本単位である“アミノ酸”

高分子有機化合物の概観で見た様に、タンパク質ーペプチドーを分解していくと一番基本の有機化合物はαーアミノ酸と呼ばれるものになります。

(これを単量体;モノマーと言います。反対にタンパク質の様に、αーアミノ酸が多数結合したものを重合体:ポリマーと言います)

αーアミノ酸はH2NーCHーCOOHと、同一の炭素原子にアミノ基ーNH2とカルボキシル基ーCOOHがくっ付いています。

さらに、これだけでは炭素の不対電子が余るので、色々な側鎖が結合して約20種類のαアミノ酸が形成されます。

ちなみに、グリシン以外のアミノ酸では炭素に全て異なる元素や官能基が結合しており、この様なCの事を不斉炭素原子と呼び*マークをつけます。

不斉炭素原子を含む化合物は、必ず光学異性体(鏡像異性体)を持ち、右手と左手の様に決して重なることがありません。

このような光学/鏡像異性体については、右の「異性体の種類と意味・数え方を解説」の記事で詳細に説明しています。ぜひあわせてご覧ください。

双性イオンと等電点

アミノ酸は水溶液中や結晶状態で電離して、カルボキシル基ーCOOHがH+を放出してNH2がH+を受け取り、COO-と、NH3+となり中和します。

全体で見ると陽イオンと陰イオンがあるのでこの状態を双性イオンと呼びます。

また、この双性イオンが溶けている溶媒のpHを変化させて、アミノ酸全体の電荷が0になった時のpHを等電点と言います。

・覚えておくべき数を表す接頭辞

これから何度も出てくるので、整理しておきます。(主にギリシャ語由来)

/1:モノ/2:ジ /3:トリ /4:テトラ/ 5:ペンタ/ 6:ヘキサ /7:ヘプタ /8:オクタ/9:ノナ /10:デカ/

・アミノ酸を覚える前に

さて、先程も述べた様にαーアミノ酸は約20種類ありますが、主だった物の名前/性質/分子量は覚えておく必要があります。

初めは複雑に思えるかも知れませんが、実際はいくつかの側鎖(官能基や元素)がくっ付いたりする事で変化するだけなので

、主な側鎖と各々のアミノ酸の大体の特徴を覚えておけば其れ程大変では有りません。

但し、難関大や医歯薬系志望の人は、構造式まで覚えておく必要があります。実際某難関大で構造式を覚えている事を前提とした出題がありました。

・主要なαーアミノ酸の性質・用語他

ここでは、覚えるべき主要なαーアミノ酸の名前、性質、分子量を紹介していきます。

※ーNH2(16)、ーCOOH(45)、ーCH2(14)
(数字)は分子量、上3つの分子量は覚えておくと後々便利です。

※ーCOOHが側鎖にも有るものを酸性アミノ酸
ーNH2が側鎖にもあるものを塩基性アミノ酸
ーCOOHとーNH2が1つずつのものを中性アミノ酸と呼びます。

※表記について:(分子量)、特別記述の無いものは中性アミノ酸

 

グリシン :H2NーCH2ーCOOH 最もシンプルなアミノ酸。唯一不斉炭素原子を持たない。(75)

アラニン :グリシンのCH2→CH(CH3) になっているもの(89)

フェニルアラニン:構造中にフェニル基(ベンゼン環を持つ) 分子量(165)

チロシン:構造中にフェノールを持つが、ーCOOHは1つなので中性アミノ酸に分類される(181)

アスパラギン酸:グルタミン酸と共に、ーCOOH基が2つあり、酸性。酸性アミノ酸(133)

グルタミン酸:ーCOOHが2つある。アスパラギン酸と同様酸性。酸性アミノ酸(147)

システイン:分子中にS(硫黄)が含まれている(121)

メチオニン:分子中にSをふくむ(149)

リシン:〜酸とは反対にーNH2を2つ持ち塩基性を示す。塩基性アミノ酸(146)

ペプチドとは?

2つのαーアミノ酸がーCOOH基とーNH2基の間で脱水して結合する事をペプチド結合と言い、ペプチド結合を1つ以上持つものをペプチドと呼びます。
※グリシン同士のジペプチド生成反応の例

H2NーCH2ーCOOH + H2NーCーCOOH→H2NーCH2ーCOHNーCーCOOH+H2O

先に書いた接頭辞を使って、アミノ酸2つのペプチドをジペプチド、3つのペプチドをトリペプチド・・・、多数の時ポリペプチドと名付けます。

逆に、ペプチドにH2Oを与えてペプチド結合を切り、個々のアミノ酸に戻す事を加水分解と呼びます。

 

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