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執筆者・編集者プロフィール
安田周平
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電磁誘導(二):導体棒の問題

<この記事の内容>:前回「電磁誘導とは?仕組みを解説(1)コイル編」に引き続いて、電磁誘導(応用編)を扱います。導体で出来た棒が運動する、頻出問題の解き方と仕組みを解説しています。

<電磁誘導の予習/復習>:これまでの磁気分野は→「高校物理・物理基礎『電磁気』まとめ」からご覧いただけます。

※:フレミング左手の法則が使いづらい、という人向けのright-hand ruleを追加し、解説しました。

電磁誘導と導体棒

さて、前回はコイルに磁石を近づける/遠ざける時に起こる電磁誘導の基礎を学びました。

ここからは力学とも融合し少しレベルアップした問題を使います。

が、一つ一つ順を追って解説するので是非今回の問題をマスターしましょう。(これが理解出来れば類題もほとんど同じ手順で解けるようになります。)

問題

以下の<図1>の様に、抵抗(抵抗値R(Ω))と質量が無視できるの導体棒があり、摩擦なく移動できる。

滑車を使って質量Mのおもりをぶら下げ、ひもで導体棒に接続すると右向きに動き始めた。重力加速度を\(gm/s^{2}\)とする。

(※空気抵抗や内部抵抗、ひもの質量は無視できるものとする)

ここで棒の速さが\(v_{0}(m/s)\)に達した時、

問1:導体棒では電流はどの方向に流れるか。

問2:問1での電流と導体棒の左右での電位差の値を求めよ

問3:この時、棒に働く電磁力の大きさを求めよ。

問4:電磁力はどちらの方向へ働くか。

(※:問題追加中)

電磁誘導(第二回)の問題図1

<図1>

まずは自力で解いてみてください。難しそうなら↓へ

解き方の手順

これまでの内容を振り返りながら、答えと解法を説明していきます。

電流の向きとレンツの法則

解答解説その1

まず、この導体棒は手を離すと右向きに動き出します。この時、次のイラストのように貫く磁束の数(面積)が増え出します。

導体棒の移動とレンツの法則

<導体棒の移動前・後>

ところが、「電磁誘導の仕組みと式(コイル)」で学んだように、基本的に『変化を嫌う』ため逆方向(ここでは◉の逆向き)にBを発生させ、その結果奥から手前へ時計回りの電流が発生します。

(右ねじ「電流が作る磁場2パターンの当該箇所参照」・レンツの法則)

右ねじ(レンツ)の法則により回路にIが発生した図

<レンツの法則と電流>

したがって、(答1):画面奥から手前方向。

誘導電流/誘導起電力の計算

(解答解説2)

向きがわかったところで、誘導起電力と誘導電流がいくらになるかを計算しましょう。棒が1秒あたりに通過する面積は"l×v0"だから、

誘導起電力を求める公式より、$$V=B\times l\times v_{0}=Blv_{0}$$

さらに、オームの法則(参照:「I=envSからオームの法則の導出まで」)より、\(V=IR\)を使って$$Blv_{0}=I\times R$$さらに式変形して、この時の誘導電流は$$I=\frac{Blv_{0}}{R}(A)$$

電磁力とその向きを求める

F=IBℓ(「フレミング左手の法則とローレンツ・電磁力」)より、

先ほど求めた誘導電流\(I=\frac{Blv_{0}}{R}\)を代入して、

$$F=\frac{B^{2}l^{2}v_{0}}{R}・・・(答3)$$

最後にFの向きを求めます。

フレミングの左手の法則を用いることで、人差し指を垂直上向き(Bの向き)、中指は電流の向き(問1で求めた向き)にそれぞれ揃えると、Fにあたる親指の向きは滑車と逆方向を向くので、「導体棒が移動する向きと反対方向・・・(答)」

右手の法則とは(フレミングの法則が苦手な人へ)

フレミングの法則をこれまで紹介してきましたが、どうも使いづらかったり指を合わせられないといった人も多いです。

そういった方は、以下の図で紹介する『右手の法則』を使うことで比較的簡単に(電磁・ローレンツ)力の向きなどを調べることができます。

フレミングの(右手・左手)の法則を使わないright-hand-rule(右手の法則)

上の図の通りで、小指〜人差し指までをB(磁束密度)の方向に揃え、電流が流れている方向に親指の向きを揃えると、手のひら(ここでは、画面の奥から手前)の方向に電磁力が発生します。

(Right-hand ruleという名前が付いていますが、”フレミングの右手の法則”や”右ねじの法則”でも同じ名前が使われているので、注意が必要です)

この方法を用いて問4を解くと、Bにあたる”小指〜人差し指”が垂直上向き、電流Iにあたる”親指”が画面奥から手前なので、手のひらの向き(=電磁力の向き)は確かにフレミング左手の法則と同じく棒の移動方向と逆方向と求めることができます。右手の法則を利用して電磁力を書き込んだ図<電磁力を書き込んだ図>

電磁誘導まとめと次回へ

今回は、

・”導体棒と電磁誘導”という電磁気+力学の典型問題を扱いました。

・この問題や少し設定を変えただけの応用問題は超頻出なので、必ず復習してマスターしておきましょう。

・ひととおりの流れがつかめたら、問題集や過去問から類題を探して解いていってください

・最後に紹介した右手の法則も知っておけば、フレミングの法則のチェックもできて便利なので、できれば覚えておくとよいでしょう。

電磁気の必見記事一覧

電磁気分野の総復習は>>「高校物理:電磁気分野の解説記事総まとめ」をご利用ください。

<磁気シリーズ一覧>

磁気第1回:「電流によって生じる磁場3タイプと右ねじの法則

第2回:「フレミングの左手の法則と電磁力+ローレンツ力

第3回:「荷電粒子の運動の基礎

第4回:「電磁誘導とは (1)仕組み・公式など

磁気第5回:「今ココです」

 

 

最後までご覧頂きまして、有難うございました。

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