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執筆者・編集者プロフィール
安田周平
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沈殿・錯塩・化合物の色と特徴

イオンの系統分離

<この記事・シリーズの内容>:イオンの系統分離の問題を解くために必要な「錯イオンの色と性質」や「炎色反応の覚え方と原理」など無機分野で重要な(主に)金属元素の性質を紹介しているシリーズです。

錯塩とイオンの色・沈殿反応

錯イオンが他のイオンと結合してできる錯塩や、金属イオンなどにある種の化合物を反応させると沈殿を生じるものがあります。

これらもまた、無機のイオン系統分析の重要なヒントになるので、それらの化学式/イオン式やその色などの情報をここでまとめておきます。

沈殿反応と色

まずは様々な沈殿反応とその沈殿した化合物の色をまとめていきます。

塩化物イオンとの沈殿

\(\mathrm{AgCl}\)

\(\mathrm{PbCl_{2}}\)

→銀、鉛の両イオンともに白色沈殿

〇〇酸イオンとの沈殿

系統分離でよく登場する〇〇酸イオンは次の3つのどれかであることが多いです。

一つは、炭酸を構成する\(\mathrm{CO_{3}^{2-}}\):炭酸イオン

一つは、硫酸を構成する\(\mathrm{SO_{4}^{2-}}\):硫酸イオン

最後に、硝酸を構成する\(\mathrm{NO_{3}^{-}}\):硝酸イオン

(リン酸イオンや酢酸イオンは基本的に出てきません)

炭酸イオンとバリウム/カルシウム

\(\mathrm{BaCO_{3}}\)
\(\mathrm{CaCO_{3}}\)
→共に白色沈殿↓

硫酸イオンとBa/Ca/Pb

\(\mathrm{BaSO_{4}}\)
\(\mathrm{CaSO_{4}}\)
\(\mathrm{PbSO_{4}}\)

→ここまで全て白色の沈殿↓

硝酸イオンとの沈殿

×(なし):基本的に硝酸イオンと反応して沈殿するものが問われることは有りません。

\(\mathrm{CrO_{4}^{2-}}\)(クロム酸イオン)※色が特徴的

クロム(Cr)は特別メジャーな金属というわけではありませんが、【鉄】や【ニッケル】などとともに注意が必要な金属です。

まず次の\(\mathrm{CrO_{4}^{2-}}\)イオンが黄色、

さらに\(\mathrm{Cr_{2}O_{7}^{2-}}\)は赤褐色です。

そして、バリウム、鉛、銀と沈殿反応を起こし、

\(\mathrm{BaCrO_{4}}\)→黄色↓

\(\mathrm{PbCrO_{4}}\)→黄色↓

\(\mathrm{Ag_{2}CrO_{4}}\)→赤褐色↓

の化合物となります。

水酸化物イオンとの沈殿

Li,K,Na,Mg,Zn,Al,Zn,Fe,Ni,Sn,Pb,H,Cu,Hg,Ag,Pt,Au

イオン化列/イオン化傾向で覚える

Li〜Naまでは沈殿が起きない。

従って、つぎのマグネシウムから銅までと水銀〜銀、それ以降(白金/金)に分けて覚えていきます。

\(\mathrm{Mg→Cu}\)までは水酸化物として沈殿

\(\mathrm{Fe(OH)_{2}}\)→緑白色↓

\(\mathrm{Fe(OH)_{3}}\)→赤褐色↓

\(\mathrm{Cu(OH)_{2}}\)→青白色↓

\(\mathrm{Ni(OH)_{2}}\)→緑色↓

上の4つの水酸化物以外は“白色沈殿”。

HgとAgは酸化物として沈殿

\(\mathrm{HgO}\)→黄色の沈殿↓

\(\mathrm{Ag_{2}O}\)→褐色の沈殿↓

鉄イオンとその周辺の小まとめ

クロムのところでも先述した通り、鉄には\(\mathrm{Fe^{2+}とFe^{3+}}\)が存在する上、沈殿の色や試薬の種類、さらに鉄鋼の製法(高炉・転炉・電気炉)でも扱いましたが、その酸化物も主に3種類あるなどかなり複雑です。

\(\mathrm{FeO→黒(Fe^{2+})}\)

\(\mathrm{Fe_{2}O_{3}(Fe^{3+})}\)→赤褐色(赤サビ)

\(\mathrm{Fe_{3}O_{4}}\)→黒色(黒サビ)

チオシオン酸K(KSCN)

\(\mathrm{とFe^{2+}→淡緑色↓、Fe^{3+}→血赤色↓}\)

※:2価の鉄イオンは淡緑色ですが、これは元々のイオンの色なので「変化しない」と言う意味です。

従って、覚えるべきは三価の鉄イオンが血赤色となるということだけです。

ヘキサ シアニド鉄〜イオンとの反応については、互いに価数が違うもの同士が反応したときに濃青色沈殿↓が起こる(Fe2+ならヘキサ シアニド鉄(3)、Fe3+なら〜シアニド鉄()とそれぞれ反応すると言った具合です。)

\(\mathrm{Fe^{2+}にFe^{3+}}\)を含むヘキサシアニド鉄(ⅲ)で濃青色の沈殿↓

\(\mathrm{Fe^{3+}にFe^{2+}}\)を含むヘキサシアニド鉄(Ⅱ)で濃青色の沈殿↓

錯イオン/水溶液の色

次に沈殿物を再び溶かしたり、試薬を用いたときに変化が起こる重要な物をまとめます。

両性金属は過剰量のNaOHで錯イオンとなり再融解

Al、Zn、Sn、Pbの4つの金属元素は酸とも塩基とも反応する『両性金属』として無機の至る所で登場します。

これらの両性金属の酸化/水酸化物に過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を加えることで、沈殿していた化合物が再び溶け(錯イオンとなり)ます。

錯イオンと構造」<<参照)

また、これらの錯イオンはいずれも無色透明です。

(イオンの系統分離の際には必ず『過剰量のNaOHを加える』といった操作が出てきます。

そこで【沈殿が消える=錯イオンとなり水中に戻る】ものがあれば、これらの4つの金属イオンのいずれかが含まれていると確認できます。)

まずアルミニウムから。

\(\mathrm{[Al(OH)_{4}]^{-}}\)

テトラヒドロキシド アルミン酸イオン

(命名法は上のリンク先で解説。ただし、アルミニウム以外の3つの名称はほとんど問われません。)

\(\mathrm{[Zn(OH)_{4}]^{2-}}\)

↑亜鉛

\(\mathrm{[Sn(OH)_{4}]^{2-}}\)

↑スズ

\(\mathrm{[Pb(OH)_{4}]^{2-}}\)

↑鉛

過剰量のアンモニアとの反応

過剰量のアンモニアで錯イオンとなるのは、

\(\mathrm{Ag→[Ag(NH_{3})_{2}]^{+}}\)

\(\mathrm{Cu→[Cu(NH_{3})_{4}]^{2+}}\)(深青色)

(銅は配位数が4ですが、錯イオンが正方形タイプになるのでした。忘れている人は→錯イオンと配位数・配位子・形のまとめを参照してください。)

\(\mathrm{Ni→[Ni(NH_{3})_{6}]^{2+}}\)・・・ニッケルの配位数6に注意!(淡紫色)

\(\mathrm{Zn→[Zn(NH_{3})_{4}]^{2+}}\)

無機(金属イオン/沈殿)の色まとめ

今回はかなり覚えることが多く大変だったかと思います。また、ここでもまだ網羅できていない部分もあり、(徐々に追加しています)。

無機においては

・工業的製法

・気体の製法

・イオンの系統分離

の三つが特に記憶量が多くしんどいです。

逆に考えるならば、この3単元を抑えることができれば無機は得点源にしやすくなり、より点数の比重の多い理論/有機化学/(高分子)に時間を回すことが可能となります。

以下の項の記事も参考にして、是非無機化学を早くに攻略してしまいましょう!

系統分離の知識編/実践問題編へ

配位結合の仕組みと覚え方

錯イオンの知識と覚えるコツまとめ

炎色反応の仕組みと色・原理を解説

>>「(次回):系統分離・分析問題(実践編)」

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